これが物理学だ!
著 者:
ウォルター・ルーウィン
出版社:
文藝春秋
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デカルトの誤り
著 者:
アントニオ・R・ダマシオ
出版社:
筑摩書房
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宇宙を創るダークマター
著 者:
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意識と自己
著 者:
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物理学者のすごい思考法
著 者:
橋本幸士
出版社:
集英社インターナショナル
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量子革命
著 者:
マンジット・クマール
出版社:
新潮社
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眠れなくなるほどおもしろい睡眠の話

書籍情報

【新書y】
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著 者:
関口雄祐
出版社:
洋泉社
出版年:
2016年12月

イルカの睡眠をはじめ、さまざまな動物の眠りを概観した一冊

この本では、たくさんの動物たちの眠りを紹介している。それが、睡眠をテーマにした他の本とは異なるところ。もちろん、私たちヒトという動物の睡眠についても語っている。だが、もっとも力を注いでいるのは、イルカの眠りだ。(本書では、とくに断らない限り、バンドウイルカをさしている)

「水族館のイルカはプールに浮いて眠る浮上睡眠、沈んで眠る着底睡眠、泳ぎながら眠る遊泳睡眠の3パターンの睡眠様式をもつ。いずれの場合も大脳が左右交互に睡眠状態になる半球睡眠をしていると考えられている」

静止型の睡眠である「浮上睡眠」と「着底睡眠」は、遊泳睡眠よりも「深い睡眠」だと考えられているそうだ。だが、仔イルカは、この静止型の睡眠ができないらしい。

仔イルカは、「イルカのくせに泳ぎが下手」で「静止ができない」という。したがって、深い睡眠である静止型の睡眠ができず、遊泳睡眠で眠るらしい。一方、「母イルカは、より深く眠れるのだから静止型の睡眠を好む」。ところが、止まれない仔イルカは、「寝ている場合じゃない!」と言うかのように、静止している母イルカの邪魔をするのだとか。著者は、「イルカもヒトも、まるで一緒だ」と結んでいる。

ちなみに本書執筆時点では、「野生環境では、イルカが浮上睡眠や着底睡眠をするとの報告はない」という。飼育環境に特化したものらしい。

イルカの「半球睡眠」といえば、片側の目だけ開いて眠るイルカの姿を思い浮かべる人も多いはず。著者は、半球睡眠の説明をした後で、「このように書くと、どうしても睡眠中のイルカはつねに片側の目だけを開いていると印象づけてしまう」と記している。じつは、「イルカは、けっこう、両目とも閉じて眠ることがある」という。そんな話も登場する。

半球睡眠は、イルカ以外のいろいろな動物が行っている。だがイルカ以外の動物は、半球睡眠もできるが、全球睡眠もできるという。「イルカだけが睡眠のすべてを半球睡眠で過ごすとされる」。だが、このようなことを述べた後で著者は、イルカも「全球睡眠もできると妄想している」と語る。

著者の「妄想」はこれだけではない。私たちヒトは全球睡眠するが、「半球睡眠もできるのではないか」と述べている。この妄想に至った経緯や、これに関する著者の実験も紹介している。この実験について述べた後、著者はこう記す。「眼帯をつけることで、局所睡眠や半球睡眠のように、脳が部分的にでも休まるのだろうと妄想している。現在、鋭意、この実験は継続中である」と。

イルカ以外にも、たくさんの動物の睡眠を紹介している。たとえば、「繁殖期には1日に5%(1・2時間)しか眠らずにがんばる」アメリカウズラシギ、樹上に「寝心地のよいベッド」をつくるオランウータン、飛びながら眠っているといわれるオオグンカンドリ、粘液で「寝袋」をつくるブダイ、など、ほんとうにたくさんの動物たちが登場する。

著者は、「睡眠は脳の機能ではなくて、神経系の機能だと考えることもできる」という。「本書では線虫のエレガンスなどを例に、脳がなくても眠りが必要となることを示し」ている。「ヒト、ハエ、さらに線虫エレガンス(線形動物)までは、ほぼ間違いなく睡眠をもつ」と記している。

「進化の過程で、不必要なものは喪失あるいは縮小する」と考えられているが、「長きにわたって、睡眠は失われることがなかった」

ひとこと

著者の専門は「動物行動学、睡眠科学」(著者紹介より)。睡眠の本ではあるが、動物学の本という色彩が強い。さまざまな動物の睡眠に興味のある方向きの本。

本書は、このレビュー執筆時点では、入手困難となっている。

初投稿日:2018年02月18日

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