重力をテーマにした面白い一般書をお探しの方におすすめの本
- 著 者:
- 大栗博司
- 出版社:
- 幻冬舎
本書の「はじめに」には、つぎのように記されている。
「万有引力の法則と相対論は、いずれも重力の働きに関する画期的な発見でした。そして現在、重力研究はニュートンとアインシュタインの時代に次ぐ、「第三の黄金時代」を迎えようとしています。」
相対論には「特殊相対論」と「一般相対論」があり、「一般相対論」がアインシュタインの重力理論。そして現在、現代物理学の二本の柱である「一般相対論」と「量子力学」を融合する理論の構築が熱心に進められている。この二つの理論を融合して「究極の統一理論」になることが期待されているのが「超弦理論」だという。
究極の理論とは、「この世界の根源を統一的に記述する」理論。なぜこのような究極の理論が存在すると言えるのかといった説明も交えて、最先端の物理学の面白さを伝えている。
本書では、「重力は弱い」などの「重力の七不思議」から説き起こし、アインシュタインの相対論とその理論の「限界」を解説し、量子力学の基礎にふれ、超弦理論にたどり着く。これが大まかな流れ。
相対論も量子力学も超弦理論も、もともとが私たち一般には難解なので、理論に関する解説は難しいと感じることも多いかもしれない。でも、その理論にまつわるエピソードなどがバランスよく織り交ぜられているので、〝難しいけれど興味をそそる〟という感じで読み進められるのではないだろうか。
久しぶりに再読したのだが、やはり面白かった。初読のときは、面白かったけれど、それ以上に難しさに打たれた記憶がある。それは知的好奇心の喚起でもあった。あれから10年以上が経ち、同分野の一般書をいくつも読み、この本に戻ってきた。いま読んだら、昔わからなかったところを読み取れるか? そんな気持ちで再び手にとった。再読したくなる本は良書だろう。難しくて理解できないことも、つぎの本へ向かう動機になる。そんな〝読書の連鎖反応〟を引き起こす起点になってくれる本の一つだと私は思っている。
著者の大栗博司は、超弦理論の専門家。本書『重力とは何か』を読んで、超弦理論に興味をもったら、『大栗先生の超弦理論入門』に進むと、最先端の物理学をより深く知ることができる。