これが物理学だ!
著 者:
ウォルター・ルーウィン
出版社:
文藝春秋
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デカルトの誤り
著 者:
アントニオ・R・ダマシオ
出版社:
筑摩書房
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宇宙を創るダークマター
著 者:
キャサリン・フリース
出版社:
日本評論社
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意識と自己
著 者:
アントニオ・R・ダマシオ
出版社:
講談社
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物理学者のすごい思考法
著 者:
橋本幸士
出版社:
集英社インターナショナル
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量子革命
著 者:
マンジット・クマール
出版社:
新潮社
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デイヴィッド・J・リンデンの本、どれを読む?

「デイヴィッド・J・リンデンの本、どれを読む?」メイン画像

専門用語を交えた本格的な解説でありながら勉強的な雰囲気を感じさせない、おもしろい読み物に仕上げる名手

デイヴィッド・J・リンデン(David J. Linden)は、ジョンズ・ホプキンス大学医学部教授。神経科学者。彼の研究室では、「記憶や運動や脳損傷後の機能回復といった多くの興味深いテーマに取り組んでいる」(参考『触れることの科学』)

リンデンの著書は、ポピュラーサイエンスとしては最も本格的な解説がなされる部類に入るが、それにもかかわらず勉強的な雰囲気を感じさせず、おもしろく読み進めることができる。

話題は多彩で、類書に比べると性の話題がやや多めだ。現在出版されている下記3冊すべてに性の話題が盛り込まれている。リンデンは、性の話題を適度に盛り込むことによって、読者の好奇心を喚起し、「神経科学という国」へと誘っているのかもしれない。

「神経科学という国」とはリンデン自身の言葉。著書『触れることの科学』のなかで、「神経科学という国の大使」と称し、「この科学の大陸の奥深くから宣伝に努めている」と述べている。

リンデンは、「神経科学という国」の奥深くへと一般読者を誘っている。別の記事にも引用したリンデンの執筆姿勢がよく表れている言葉を、ここにも紹介しておきたい。著書『快感回路』で、つぎのように述べている。

「脳の快感回路について、分子レベルの話や基本的な脳の構造について一切触れずに解説本を一冊書くこともできるだろう。しかし、そんな、赤ん坊にスプーンで食事を与えるようなやり方では、いちばん面白くていちばん大切な部分を省かなくてはいけなくなる。本書は、そのような簡略な本ではない。基礎的な神経科学について少しばかりご一緒に頑張って学んでいただくことになる。しかし読者にそうしていただけるなら、そこから楽しく愉快に、人間の快感と非日常体験と依存症について細胞や分子のレベルで探究していけるよう、私も頑張って精一杯書いていこうと思う」

上記の言葉に共感できるなら、リンデンの本はきっと楽しめるはず。読ませる工夫をしながら執筆している神経科学者のひとりだと思う。

デイヴィッド・J・リンデンの書籍

2018年10月26日時点で、デイヴィッド・J・リンデンの一般向け科学本(日本語版)は、下記3冊。

触覚に関する多彩な知見を得ることができる『触れることの科学』

たまたま手に触れたものが、人の印象や人間関係のあり方に影響を及ぼすことがある。前腕や大腿を撫でる実験で被験者が最も心地よいと報告した速度は、毎秒3~10センチの範囲。「認知が痛みを増減する」、など、多彩な知見に触れることができる。読み物としてのおもしろさと学びの要素がバランスよく盛り込まれた一冊。

【河出文庫】
触れることの科学
著 者:
デイヴィッド・J・リンデン
出版社:
河出書房新社
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脳科学の見地から、快感および依存症について論じる『快感回路』

快感回路(報酬系)の観点から、薬物依存、食欲、性行動、ギャンブル依存、瞑想や慈善行為などを見ていく。分子レベルの解説を交えた本格的な解説書(一般向けレベル)でありながら、勉強的な雰囲気はなく、おもしろく読み進めることができる本。快感の脳科学に興味のある方におすすめ。

【河出文庫】
快感回路
著 者:
デイヴィッド・J・リンデン
出版社:
河出書房新社
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脳科学の基礎知識を読者に伝授し、多彩な話題を論じる『つぎはぎだらけの脳と心』(文庫版書名『脳はいいかげんにできている』)

読者に「知識はまったくなく、知性は無限にある」、という考えのもとに書かれている。脳科学の基礎知識を読者に伝授し、その後で、「感覚と感情」「記憶と学習」「愛とセックス」「睡眠と夢」「宗教」といったテーマを論じていく。〝脳について、専門書のような解説は必要ないが、一般レベルでなるべく詳細に解説してほしい〟という方におすすめ。

【河出文庫『脳はいいかげんにできている その場しのぎの進化が生んだ人間らしさ』】
脳はいいかげんにできている
著 者:
デイビッド・J・リンデン
出版社:
河出書房新社
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デイヴィッド・J・リンデンの本、どれを読む?

現時点(2018年10月26日)では、はじめの一冊としては『脳はいいかげんにできている』(単行本書名『つぎはぎだらけの脳と心』)か『快感回路』のどちらかがよいと思う。どちらも私のおすすめ本だが、あえて一冊選ぶなら、私は『快感回路』を選ぶ。

脳の話題を広く知ることができるのは『脳はいいかげんにできている』のほうなので、はじめの一冊は『脳はいいかげんにできている』が適切かもしれない。でも、『快感回路』のおもしろさは格別だった。脳に興味をもった人の必読書だと私は思っている。

ある程度、脳科学の一般書を読んでいて脳科学の用語に慣れているなら『快感回路』、あまり慣れていないなら『脳はいいかげんにできている』という選び方もよいかもしれない。出版順に、『脳はいいかげんにできている』『快感回路』と続けて読むのがベスト。どちらも文庫化されているので手に取りやすい。

【河出文庫】
快感回路
著 者:
デイヴィッド・J・リンデン
出版社:
河出書房新社
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デイヴィッド・J・リンデン profile

『触れることの科学』より(一部省略して)引用

神経科学者。ジョンズ・ホプキンス大学医学部教授。主に細胞レベルでの記憶のメカニズムの研究に取り組むとともに、脳神経科学の一般向けの解説にも尽力。長年、Journal of Neurophysiology誌の編集長も務める。

初投稿日:2018年10月29日最終加筆:2022年12月23日

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