「重力レンズ」の一般向けの入門書としておすすめの本
重力で宇宙を見る
- 著 者:
- 二間瀬敏史
- 出版社:
- 河出書房新社
この本の第7章から第10章まで(約70ページ)を〝「重力レンズ」の一般向けの入門書として〟おすすめしてみたい。
著者の二間瀬敏史は、重力レンズを用いて、「現代天文学における最大の謎」である、ダークマター(暗黒物質)とダークエネルギー(暗黒エネルギー)の正体に迫ろうとしている。
現代天文学(本書が執筆された時点での最新の観測データ)によると、私たちの体や星などをつくっている物質(バリオン物質というそうだ)は宇宙の構成要素の約5%で、ダークマターが約27%、ダークエネルギーが約68%だという。つまり、宇宙の95%は謎に包まれていることになる。
この未知なる「ダークマター」と「ダークエネルギー」の正体に迫るうえで、「重力レンズを使った観測に注目が集まっている」そうだ。
この本(第7章以降)では、重力レンズ現象の発見、重力レンズの種類、重力レンズの研究の歴史について解説して、重力レンズとは何かを浮き彫りにし、そして、ダークマターとは何か、ダークエネルギーとは何かを説明し、最後に、重力レンズを用いてどのようにして「宇宙のダークサイド」に迫ろうとしているのかを解説している。これらの話題が、〝約70ページ〟のなかに盛り込まれている。
たとえ難しい内容があったとしても(宇宙の話は私たち一般にはとても難しい)、〝70ページの本〟ととらえると気楽に読み始められるのではないだろうか。「宇宙のダークサイド」はとても興味深い話題なので、重力レンズという切り口で、この謎に触れてみるのもおもしろいと思う。
ちなみに、本書の第6章までの主題は「重力波」。メディアで大々的に報じられた「重力波」の概要を知ることができる一冊でもある。そして、著者の研究の歴史も垣間見える本だ。
初投稿日:2018年05月28日