これが物理学だ!
著 者:
ウォルター・ルーウィン
出版社:
文藝春秋
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デカルトの誤り
著 者:
アントニオ・R・ダマシオ
出版社:
筑摩書房
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宇宙を創るダークマター
著 者:
キャサリン・フリース
出版社:
日本評論社
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意識と自己
著 者:
アントニオ・R・ダマシオ
出版社:
講談社
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物理学者のすごい思考法
著 者:
橋本幸士
出版社:
集英社インターナショナル
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量子革命
著 者:
マンジット・クマール
出版社:
新潮社
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井ノ口馨の本、どれを読む?

「井ノ口馨の本、どれを読む?」メイン画像

記憶のしくみを分子レベルから解き明かす。その解明を通して目指すのは、「人間とは何か、自分とは何者か」という問いに答えること

井ノ口馨(いのくち・かおる)は、富山大学大学院医学薬学研究部(医学)教授。専門は分子脳科学(『記憶をあやつる』著者紹介)

記憶を分子レベルで研究しており、その研究を手がかりに「人間とは何か、自分とは何者か」という問いに迫ろうとしている。

高校時代にドイツの哲学者たちの著作を貪り読んだ井ノ口馨は、最初は哲学者になろうと思い、そのうちに「哲学のようにいくら思弁をやっても答えが出ない。そうではなくサイエンスベースで問い直してみたい」(『記憶をコントロールする』)と思うようになった。

研究の出発点は、「人間とは何か、自分とは何者か」という問いかけだった。そう語る井ノ口馨は、いつか自身の研究の集大成について著すとき、きわめて難題なこの問いに対してどんな見解を綴るのだろうか。〝哲学的な問いと科学の融合こそがおもしろい〟と思っている読者であれば、注目しておきたい著者だ。

現在出版されている著書では、「記憶」研究の歴史を概観し、また自身の研究成果を研究エピソードを織り込みながら解説し、現代脳科学がどこまで「記憶のしくみ」に迫っているのかを紹介している。

井ノ口馨らの研究に関しては、現時点では、神経新生が海馬での記憶の消去に関与しているという研究(『セル』に発表)、「シナプスタグ仮説」を実証した研究(『サイエンス』に発表)、ほかに、「記憶の連合」にまつわる研究を紹介している。また、研究成果の医学的応用についても論じている。

井ノ口馨の書籍

2018年4月時点で、井ノ口馨の一般向けの科学本(専門書、著者が多数の場合は除く)は下記の二冊。

脳科学の研究史を辿り、脳科学の基礎知識を伝授し、そして分子脳科学によって明らかにされてきた「記憶研究のフロンティア」を伝えた『記憶をあやつる』

本書のクライマックスは、2015年に著者・井ノ口馨らのグループが発表した論文について紹介するところ。この論文のテーマは、「人工的な記憶の連合」だという。書名のように少し劇的に言えば、著者らは脳科学的手法によって、マウスの記憶をあやつったのだ。「記憶の連合」とは何かを説明した後で、著者らの論文を紹介している。他にも、「セル・アセンブリ(細胞集成体)仮説」にまつわる話、「場所細胞」にまつわる話など、たくさんの話題がある。入門書として最適な一冊。

【角川選書】
記憶をあやつる
著 者:
井ノ口馨
出版社:
KADOKAWA
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「脳科学、記憶研究」へ「若い俊才たち」を招待する『記憶をコントロールする』

プロローグでは、「なぜ研究者になったか」を綴っている。井ノ口馨の研究の出発点は、「人間とは何か、自分とは何者か」という問いかけだった。ある一冊の本が井ノ口馨を記憶研究に導いたのと同様に、本書は「若い俊才たち」を記憶研究に招待する一冊。こう呼びかけている。「ぜひ脳科学、記憶研究に興味を持ってほしい。あなたが明日のガリレオ、ニュートンかもしれない」と。記憶の最前線を紹介して、「若い俊才たち」を記憶研究にいざなう一冊。

【岩波科学ライブラリー】
記憶をコントロールする
著 者:
井ノ口馨
出版社:
岩波書店
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井ノ口馨の本、どれを読む?

2018年4月時点で一般向けの本は二冊なので、〝どちらを読む〟と書くべきなのだが、いつもどおりのタイトルにしている。(今後も著書が出版されると思っている)

さて、現時点でどちらを読むか。

一般レベルでなるべく詳しく解説してほしいなら『記憶をコントロールする』、やさしいわかりやすい解説がお好みなら『記憶をあやつる』。こんな分け方ができるのではないだろうか。

『記憶をコントロールする』は、脳科学の本をある程度読んでいる方を読者として想定している。一方の『記憶をあやつる』は、脳科学の知識ゼロの方を読者として想定している。(と思う)

どちらの本を選んでも主要な話題を知ることはできる。この二冊の特徴を、その違いに焦点をあてて紹介してみると、こんな感じだろうか。

『記憶をコントロールする』(2013年出版)には、著者の自伝的エピソードがたくさん盛り込まれている。実験手法について詳しく説明されている(一般向けレベル)。「神経新生が海馬での記憶の消去に関与している」という著者らの研究が詳しく紹介されている。約120ページのため、速いテンポで進む。

『記憶をあやつる』(2015年出版)には、脳科学の研究史と基礎知識が盛り込まれている。したがって入門書的。(前著のような自伝的なエピソードはない)。「記憶の連合」について詳しく説明されている。(前著で詳しく書いてある神経新生の話は簡単に紹介されている)。2015年の著者らの研究が紹介されている。約200ページ。

なので、二冊読んでもどちらも楽しめると思う(当然ながら重複する話題もある)。私は二冊ともおもしろかったので、どちらもおすすめしたい。

読む順番としては、出版された順でもよいのだが、脳科学の本をあまり読んでいない方なら、入門書的な『記憶をあやつる』を先に読んでみるのもありかもしれない。私は、『記憶をあやつる』を記憶の脳科学〝入門書〟としておすすめしている。

【角川選書】
記憶をあやつる
著 者:
井ノ口馨
出版社:
KADOKAWA
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井ノ口馨 profile

『記憶をあやつる』より(一部省略して)引用

1955年生まれ。1979年、名古屋大学農学部卒。1984年、同大学大学院農学研究科博士課程終了。農学博士。米国コロンビア大学医学部、三菱化学生命科学研究所研究主幹を経て、2009年より富山大学大学院医学薬学研究部(医学)教授。専門は分子脳科学。2010年に時実利彦記念賞(日本神経科学学会)を、2013年に文部科学大臣表彰科学技術賞(研究部門)を受賞。

初投稿日:2018年05月10日

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