「こころ」はいかにして生まれるのか ——最新脳科学で解き明かす「情動」

書籍情報

【ブルーバックス】
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著 者:
櫻井武
出版社:
講談社
出版年:
2018年10月
定 価:
本体1,000円+税

こころ、情動、感情、こうしたことについて考えるための、さまざまな脳科学の知見を得ることができる

本書では、「脳のつくり」から説明を始める。脳は、どのようにして進化してきたのだろうか? 著者は、つぎのように述べる。

「脳は基本的に、新しい機能をもつ組織を外側に「増築」していく形で進化してきた。したがって、表層に近いほど進化的に新しく、また高次の機能をもっている。もっとも外側に位置する、つまり、もっとも進化的に新しい部分が、大脳皮質である」

まずは、大脳皮質にまつわる解説がなされる。この解説によって、脳の基本的なことを知ることができる。

では、「こころ」は、大脳皮質にあるのか? そうではないと著者は言う。「「こころ」の核心の部分は、脳のもっと古い部分にあると言ってもよい」。「進化論的には、原始的な動物にも「こころ」の原型は見られる」という。

最初の章では、ガリレオ・ガリレイの印象深い言葉も紹介されている。ガリレオはこう述べたそうだ。「味、におい、色などは意識の中だけに存在する。だから、もし生物が存在しなければ、そのような感覚はすべて消えてなくなるであろう」

脳の不思議さを感じさせながら、脳の基本的なことを解説していくのが第1章だ。

つぎの第2章では、「情動」と「感情」について見ていく。情動と感情という言葉は似ているが、その違いについて丁寧に述べている。「情動」は、本書の重要なキーワード。こころ、意識、そういったことに興味をもつ読者は、ぜひ読んでおきたい一章だ。

第3章は、「大脳辺縁系」にまつわる解説。著者はつぎのように記している。

「情動は、脳でもっとも進化した部位である大脳皮質よりもやや進化論的に古い「大脳辺縁系」と呼ばれる構造によって生みだされるとされている。大脳辺縁系は大脳皮質よりも内側にある。このことは、情動は認知などの大脳皮質の機能よりも、進化的に古い機能であることを意味している。」……略……。「私たちの場合、この部分だけが情動にかかわるのではなく、大脳辺縁系がさまざまな脳のシステムに、そして全身に働きかけ、大脳皮質の前頭前野がそれを認知することで、完成した情動が生まれる。……略……」

また、大脳辺縁系は「記憶にも重要な働きをしている」という。この章では記憶の種類についても概観している。そして、「感覚」と「情動」と「記憶」が密接な関係にあることを述べている。

本書には、各章ごとに「まとめ」がある。第3章のまとめの一つは、つぎのようなもの。「感覚は大脳皮質と大脳辺縁系で並列処理され、前者は感覚情報の物理的側面を、後者は情動的側面を受けもつ」

第4章では、動物やヒトの情動をどのようにして客観的に評価するのかについて述べている。

第5章では、海馬と扁桃体について解説し、記憶についてさらに深く解説する。「記憶にも情動にも、全身の状態が大きく影響する」という。

第6章は、報酬系の解説。

第7章では、「こころ」の機能に強く影響を及ぼす脳内物質を紹介する。まず、脳内で産生され脳で働いている物質を見ていき、その後で、「末梢臓器でつくられ、血液に乗って運ばれて、脳に作用する物質」について見ていく。

終章では、「こころ」とは何かについての著者の考えをまとめる。「「こころ」は、いまもなお進化しつづけている」という。

ひとこと

脳部位など専門用語もたくさん出てくる本だが、脳科学の本をまったく読んでいない人も読めるように、基本的なことから丁寧に解説している。とくに、情動と大脳辺縁系を(一般レベルで)詳しく解説している。

初投稿日:2019年02月20日

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