睡眠の科学ーーなぜ眠るのかなぜ目覚めるのか
書籍情報
- 著 者:
- 櫻井武
- 出版社:
- 講談社
- 出版年:
- 2010年11月
- 著 者:
- 櫻井武
- 出版社:
- 講談社
- 出版年:
- 2017年8月
覚醒の制御にかかわる神経ペプチド「オレキシン」の発見者である著者が、睡眠と覚醒の脳内メカニズムを解説
睡眠は進化の過程で失われることがなかった。このことからも睡眠が重要な機能であることがわかる。本書はそんな指摘からはじまり、読み終えた頃には、脳科学に基づいた睡眠知識を得ることができる。
一晩の眠りのなかでは、さまざまな変化が起こる。「ノンレム睡眠」や「レム睡眠」と呼ばれるそれぞれの睡眠段階では、脳の活動状態も身体の状態もまったく異なっている。本書では、それぞれの睡眠がどのようなものか、そして覚醒と睡眠はどのようにして切り替えられるのか、といった睡眠のしくみが、脳科学の知見に基づいて丁寧に解説される。
必要とされる脳科学の知識は、コラムなどで解説されている。「ニューロン(神経細胞)」「活動電位(アクションポテンシャル)」「前頭葉と前頭前野」「脳の構造」「神経伝達物質」「大脳皮質」などなど、ほかにも、脳科学の基礎知識をもたない読者のためのコラムが用意されている。
著者は、覚醒の制御にかかわる神経ペプチド「オレキシン」の発見者であり、オレキシンについては第4章と第5章を割いて、発見経緯からその機能までしっかりと語られている。ここでは、オレキシンと関連があるというナルコレプシーの概説もある。
第6章では、睡眠導入薬などの薬物についての解説がなされ、第7章では、「時差ぼけが起こるのはなぜ?」「腹時計って本当にあるの?」など睡眠に関する13項目の疑問に答えていく。終章では、「なぜ眠るのか?」という問いへの著者の仮説が述べられている。
ひとこと
各章の扉には、著名人の睡眠に関連する言葉が引用されている。シェイクスピアやプルースト、村上春樹もある。ここでは第3章の扉にあるプルーストの言葉を引用してご紹介したい。「睡眠はいわばわれわれの入る第二の部屋であって、われわれは自分の部屋を出てその別室にいくのである。」
下記リンク先を「改訂新版」に変更した(レビューは初版を読んで書いたもの)