脳には妙なクセがある
書籍情報
- 著 者:
- 池谷裕二
- 出版社:
- 扶桑社
- 出版年:
- 2013年12月
- 著 者:
- 池谷裕二
- 出版社:
- 新潮社
- 出版年:
- 2018年2月
気軽に読める脳の「小ネタ集」だが、著者の「脳観」もしっかりと語られる。意志は「周囲の環境と身体の状況で決まります」というのが著者の見解
「脳は妙に○○」という26の章が立てられ、脳研究のさまざまな論文をもとに、興味深い脳の性質が紹介される。この「小ネタ集」の体裁は『脳はなにかと言い訳する』と同じで、この続編といえる。しかしただの小ネタ集とは違い、著者の「脳観」もしっかりと語られている。その意味では、『単純な脳、複雑な「私」』を思わせる内容ともいえる。
「はじめに」でこう述べられている。「本書のバックボーンは第11章、22章、そして26章です。この三つの章に、私の脳観を描きました。(後略)」と。ここで強調されていることは「身体」の重要性だ。池谷裕二はこれまでの著書でも身体の重要性を述べている。
第22章に著者の見解が示されている。「意志は脳から生まれるのではありません。周囲の環境と身体の状況で決まります―これが私の見解です。そして、この考え方こそが本書の通奏低音となっています」
意志が周囲の環境と身体の状況で決まるとはどういう意味だろうか。この説明に用いられている言葉が「反射」だ。これは広い意味での「反射」で、「その場面において惹起される限定的で自動的な応答全般」(強調の傍点を省略して引用)という意味で用いられている。こうした「自由意志」にまつわる解説部分は、納得する方とそうでない方が分かれそうなところだが、もしあなたが、なぜ自分はあんなことを言ってしまったのか、なぜあんなことをしてしまったのか、そんな思いに悩まされたことがあるのなら、一読の価値あり。
章の見出しには、「脳は妙に自分が好き」「脳は妙に恋し愛する」「脳は妙に人目を気にする」「脳は妙に酒が好き」などがある。
単行本は、2012年に刊行されている。
ひとこと
本書で語られる身体の重要性はやはり心にとめておきたいところ。最後のほうに紹介されているニーチェの言葉を引用しておきたい。「人間の肉体は一つの大きな理性である ニーチェ」
扶桑社新書を読んで書評を書いたが、リンク先は文庫版に変更した。