人間らしさとはなにか?ーー人間のユニークさを明かす科学の最前線
書籍情報
- 著 者:
- マイケル・S・ガザニガ
- 訳 者:
- 柴田裕之
- 出版社:
- インターシフト
- 出版年:
- 2010年3月
さまざまな科学者の研究を紹介しながら、人間のユニークさを浮き彫りにする
著者ガザニガは、人間は進化の産物だが「私たち人間は特別だ」と主張する。氷が水に、水が水蒸気になるのと同じように、進化のプロセスで相転移が起こったのだという。霧と氷山が大きく異なっているように、人間と他の動物は似ても似つかないのだ、と。本書は、さまざまな科学者の研究を紹介しながら、人間のユニークさを浮き彫りにすることを試みたもの。
まず、人間の脳がユニークな特徴を持っていることを、脳領域、細胞、遺伝子といったレベルで見ていく。たとえば、「外側前頭前皮質にある10野は、人間では類人猿のほぼ二倍ある」といった知見が紹介される。人間の身体もユニークだ。たとえば、私たちの「親指」や「喉頭」がユニークであることが述べられている。
「言語能力」を人間のユニークな点にあげる者は多いという。では、類人猿の言語能力はどうなのだろうか。類人猿に言語を教えることを試みた研究の紹介がある。また、類人猿のコミュニケーションもとりあげられている。チンパンジーが「心の理論」を持っているかどうかは興味深い話題だ。
人間の社会性についても論じられている。ある研究によると、社会集団のサイズと脳のサイズには相関関係があるそうだ。人間の大脳新皮質のサイズから割り出した社会集団のサイズは150人だという。この知見に基づくならば、一個人が動静を追うことのできる人数は150人くらいとなるようだ。
道徳や情動の話題もある。たとえば次のような見解が述べられている。「私たちには生得の倫理プログラムが選択されて組み込まれている」、人間はネガティブ優先のバイアスを持っている、自分の身体に敏感だと他者への共感も強まる、などなど。模倣やミラーニューロンの話題もある。
信念、意識、自己というトピックでは、著者の提唱している左半球の「解釈装置」が登場する。分離脳研究と「解釈装置」を中心に、さまざまな話題が盛り込まれている。たとえば、「エピソード記憶」を持っているかもしれないアメリカカケスの話題などがある。
芸術についても論じられている。「人工知能」や「神経インプラント」の話題もあり。
ひとこと
ページ数は、参考文献と解説も含めて約600ページ。