ホーキング、ブラックホールを語るーーBBCリース講義
書籍情報
- 著 者:
- スティーヴン・W・ホーキング
- 監 修:
- 佐藤勝彦
- 訳 者:
- 塩原通緒
- 出版社:
- 早川書房
- 出版年:
- 2017年6月
- 著 者:
- スティーヴン・W・ホーキング
- 監 修:
- 佐藤勝彦
- 訳 者:
- 塩原通緒
- 出版社:
- 早川書房
- 出版年:
- 2020年4月
本書は、2016年のBBCリース講義で、著者スティーヴン・W・ホーキングが、2回にわたってブラックホールについて語った講義録。主な話題は、ホーキング放射によるブラックホールの蒸発と、ブラックホールのインフォメーション・パラドックス
ホーキングはこう語り始めた。「事実は小説よりも奇なり、と言いますが、ブラックホールほどこの言葉が当てはまるものもありません」
「巨大な星が自らの重力で内側につぶれる」ことを、科学界はなかなか認められなかった。アインシュタインは、論文で、「星が重力で崩壊するなんてありえない、いくら物質が圧縮されるといっても限界があり、ある一定の点を超えてまで縮むはずはないからだ」と書いたという。だが、「そのような崩壊した星のなれの果て、それがすなわちブラックホール」だ。ホーキングは、このようなことから語り始めて、星の進化の話など、ブラックホールにまつわる基本的なことを、非常に大まかに述べていく。「ブラックホールには毛がない」という話題も登場する。
つぎに、「ブラックホールを取り囲む境界面である、事象の地平面の表面積に関する」数学的な発見について語る。こう記している。「ブラックホールに新たな物質や放射が落下するたびに、地平面の表面積は大きくなっていくという特性がありました」と。そして、事象の地平面の表面積と熱力学のエントロピーの概念とのあいだの類似性について、ヤコブ・ベッケンシュタインの研究について、述べていく。
この後、ブラックホールがあたかも熱い物体のごとく放射を行ない、蒸発することを論じる。
「ブラックホールのすぐそばの物質がどういうふるまいをするかを、量子力学にもとづいて研究して」いた著者ホーキングは、つぎのようなことを見出した。こう記している。「私の計算では、ブラックホールはあたかも通常の熱い物体のごとく、つまり、表面重力に比例し、質量に反比例する温度を持った物体のごとく、粒子と放射を生成し、放出することが予測されたのです」
これは、「ブラックホールからは何も放出されない」というそれまでの見解を覆すものだった。
さらに、「ひとつの方法として、この放射は次のように理解することができます」と述べて、この解説を続ける。
そして、ブラックホールの蒸発について、つぎのように記す。
「ブラックホールから粒子が抜け出るとともに、そのブラックホールは質量を失い、縮んでいきます。それにより、粒子の放出ペースが速まります。最終的に、このブラックホールは質量をすべて失って、消滅するでしょう」
この記述から、ブラックホールのインフォメーション・パラドックスへと話を展開していく。これが本書のメインテーマだ。
この本は、「序文」や「監修者あとがき」などを含めて約90ページ。
ひとこと
難解なテーマのため、編者のデイヴィッド・シュックマンによる注釈が加えられている。この注釈は、(巻末ではなく)本文中に小さな文字で記されている。また、その数も多い。そのため、ホーキングの語りをある程度読むと、すぐにシュックマンの短めの説明が入る。これを交互に読み進めることもできるし、文字サイズが明らかに異なるので、ホーキングの語りのみを読んで、その後で注釈のみを読むこともできる。