ブラックホールーー一般相対論と星の終末
書籍情報
- 著 者:
- 佐藤文隆/R.ルフィーニ
- 出版社:
- 筑摩書房
- 出版年:
- 2009年10月
専門書と一般書の中間くらいの本
まず最初に告白すると、私はこの本を第3章から読み始めて、しかも数式部分を含めていくつか飛ばしつつ読んだ。〝つまみ読み〟とでもいうような読み方をした。
この本の構成をざっと紹介すると、コペルニクスやガリレオから第1章を始めて、第2章が「アインシュタインの相対性理論」。第3章から第5章(最終章)が、星の進化とブラックホールにまつわる話題。もちろん、富松―佐藤解の話も登場する。
本書は数式がたくさん出てくる本だが、言葉のところだけ〝つまみ読み〟することもできる。序章の前にある「本書の読み方について」の記述を紹介したい。
「本文は、大きい活字と小さい活字の二つで印刷されているが、小さい活字の部分は補助的説明またはより専門的な説明である。読者は小さい活字の部分を飛ばして読まれても本書の大すじは理解できるようにしてある。しかし、数式の意味などは多くの場合、小さい活字の部分を読まなければ十分な理解はむずかしいであろう」
「物理学の基礎を学ばれた読者は、本書にあらわれる基本的な数式を計算で確かめることができるであろう。そうすることは、より正確な理解を助けるとともに、より面白い読み方となるであろう」
この本のレベルはどれくらいか。また、佐藤文隆とルフィーニの共著になっている理由について(訳書ではなく、佐藤文隆が執筆したそうだ)
まず、本書の最後にある「ブラックホールと、ルフィーニと私と ――「あとがき」にかえて――」よりの引用。
「……略……彼[ルフィーニ]は秋にはオーストラリアの新興都市パースで一般教養的な集中講義を行なったので、そのレジュメを送ってきた。この本の構成の第ゼロ近似はそれから出発している。それは最近の研究だけでなく、ガリレオからはじまる歴史的導入部を含んだものであった。そして多くの記述は、私が各地の大学で行なった大学院生用の集中講義のノートを下敷にした。また多くの図表をルフィーニの論文や講義録から採用した。このために、この「自然選書」の趣旨から少しそれて専門的すぎるという難が目立ってきたかも知れない。清書の段階で少しその点は修正したつもりだが、はじめの性格を変えるほどにはなっていない。その点では一般書としても、専門書としても中途半端なものになってしまったようである。逆にいうと両方の読み方もあるのではないかなどといういいわけも考えたりしている。……略……」
もう一つ、「文庫版あとがき」より引用。
「……略……本書は1970年代前期に世界のブラックホール研究の最前線にあったホイラー・グループの成果をもとに出来たものである。日本語だから私が執筆したものだが、内容と図表などはこのグループのリソースを引き継いでいる。本書が私とルフィーニの共著になっている事情はこのようなものである。……略……」
(引用の際に、「,」は「、」に、「.」は「。」にしている)
ひとこと
1976年に中央公論社より刊行されたものが、2009年に文庫化された。