これが物理学だ!
著 者:
ウォルター・ルーウィン
出版社:
文藝春秋
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デカルトの誤り
著 者:
アントニオ・R・ダマシオ
出版社:
筑摩書房
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宇宙を創るダークマター
著 者:
キャサリン・フリース
出版社:
日本評論社
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意識と自己
著 者:
アントニオ・R・ダマシオ
出版社:
講談社
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物理学者のすごい思考法
著 者:
橋本幸士
出版社:
集英社インターナショナル
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量子革命
著 者:
マンジット・クマール
出版社:
新潮社
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見えない宇宙ーー理論天文学の楽しみ

書籍情報

【単行本】
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著 者:
ダン・フーパー
訳 者:
柳下貢崇
出版社:
日経BP社
出版年:
2008年7月

「物理学と宇宙論について私が感じている驚きをこの本で伝えたい」(「まえがき」より)。本書は、ダークマターとダークエネルギーの謎の正体をめぐる科学的な探究を軸にして、ミクロの世界の物理学と宇宙論について語る

著者ダン・フーパーは、かつて一般向けの物理学の本に夢中になったそうだ。ポール・デイヴィスの本の「中毒」になり、ほかにも「ミチオ・カク、キップ・ソーン、リチャード・ファインマン、ジョン・グリビンらの一般向けの物理学の本を読んだ」。そして、「私の人生の軌跡がそのとき始まった。私には物理学者になること以外どんな選択肢もなかった」という。ポール・デイヴィスの本が著者を理論物理学者にしたのだと語る。

本書は、そのような読書体験をもつダン・フーパーの初めての一般向け著作。著者はこの本について、つぎのように述べる。

「物理学と宇宙論について私が感じている驚きをこの本で伝えたい。一般向けの科学読み物を初めて読んだときに感じたあの喜びを私は今でも忘れていない。この本で現代物理学の中でもっとも心を踊らせるアイデアと発見を伝えようとしたのは、この精神に沿ってのことである」

本書のメインテーマは、この宇宙に存在しているという「見えない」もの、ダークマターとダークエネルギーだ。

「これまでの数十年の間、複数の証拠に基づいて、宇宙の質量とエネルギーのうちおよそ95パーセントが私たちに見えない形で存在するとの結論が導き出されてきた」と著者は述べる。

では、科学者たちはどのようにして「見えない」ものたちの存在を浮かび上がらせてきたのか。そして、いまだ正体不明の2つの「ダーク」をどのように探査しているのか。本書は、ダークマターとダークエネルギーの謎の正体をめぐる科学的な探究を軸にして、ミクロの世界の物理学と宇宙論について語る。

ダークマター候補の話を軸に、さまざまな物理理論を紹介する

これまで考えられてきたダークマター候補のなかに、白色矮星、褐色矮星、中性子星、ブラックホール、木星のような惑星、がある。この解説のところでは、星の進化について述べ、また、一般相対性理論を概説して、ブラックホールにまつわる話題を紹介している。そのあとで、「元素合成問題」を説明して、これらの天体は「控えめにいっても宇宙のダークマターの主要な候補にはならないようだ」と結論する。(ただし、「原始的なブラックホール」は可能性があるようだ)

つぎの候補は「量子的な粒子」だ。そこでまず、量子論について概説する。プランク、アインシュタイン、ボーア、シュレディンガーなどの業績を描きだし、素粒子物理学の「標準模型」の話題にまで踏み込む。そのあとでこう述べる。「標準模型の中でダークマターの候補の可能性があるのはたった一種類の粒子しかない。(中略)その質量はニュートリノの形式をとっているにちがいない」と。

そして、ニュートリノ発見にまつわる話題などを盛り込みながら、ニュートリノを概説する。結論として、ニュートリノも「もはやダークマターの候補とは考えられていない」と述べる。もちろん、候補からはずれた理由を解説している。

そうすると、「ダークマターをさらに探し求めるには、私たちは標準模型を超えて、今はまだ想像されているにすぎない粒子に目を向ける必要がある」。ここでは、「対称性」の説明からはじまり、「超対称性」の説明へ。そして、こんなふうに述べる。「超対称性のもっとも単純なモデルには、ダークマターの候補になりうる興味深い粒子が七つある」と。いよいよニュートラリーノなどが登場する。ニュートラリーノは有望な候補だそうだ。

それから、ダークマターの検出実験の話題があり、そのあとで、著者の「お気に入りのダークマター候補の一つ」を解説。「その粒子は、私たちが経験する3次元を超えた、余剰次元の空間を旅する物質が存在することの所産なのだ」という。ここでは、ひも理論の発展を辿り、余剰次元を解説。そして、カルツァとクラインの業績について述べる。「ビッグバンで生みだされたこれらのカルツァ–クライン状態の粒子が現代まで十分たくさん生き残っているなら、それらは私たちが探し求めているダークマターでありうる」という。そして著者はこう続ける。

「私たちの世界のダークマターが実際に空間の余剰次元の中を運動している粒子の所産であるなら、宇宙の見失われた質量[ミッシングマス]は実は質量ではなく、高次元の時空の幾何のために隠れてしまう運動である。(中略)私たちが現在ダークマターと呼んでいるものは、いつの日か10次元の時空の中を動きまわるごく普通の物体であることがわかるかもしれない」

もちろん、ダークエネルギーの話題もあり

主要な宇宙論の話題などを織り込みながら、ダークエネルギーについて解説している。また、ダークマターやダークエネルギーへの「懐疑論」についても述べている。最後に、「宇宙論の将来予測」があり、「22世紀の視点から宇宙論の歴史を振り返る体裁」で書いている。

ひとこと

テーマは難解だが、おもしろい読み物。

初投稿日:2016年03月11日

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