これが物理学だ!
著 者:
ウォルター・ルーウィン
出版社:
文藝春秋
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デカルトの誤り
著 者:
アントニオ・R・ダマシオ
出版社:
筑摩書房
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宇宙を創るダークマター
著 者:
キャサリン・フリース
出版社:
日本評論社
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意識と自己
著 者:
アントニオ・R・ダマシオ
出版社:
講談社
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物理学者のすごい思考法
著 者:
橋本幸士
出版社:
集英社インターナショナル
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量子革命
著 者:
マンジット・クマール
出版社:
新潮社
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海馬ーー脳は疲れない

書籍情報

【新潮文庫】
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著 者:
池谷裕二/糸井重里
出版社:
新潮社
出版年:
2005年7月

糸井重里と池谷裕二の対談。糸井重里が、「コミュニケーションの能力を高めるにはどうすればいいか、という観点から」池谷裕二の知識を引き出し、巧みに話を展開する

聞き手として、また話し手として、名手といえる人物のひとりが糸井重里ではないだろうか。いま活動のメイン舞台となっている「ほぼ日刊イトイ新聞」(ほぼ日)でも、さまざまな対談を行っている。

いまでは池谷裕二の本は多数刊行されているが、本書は糸井重里が対談相手とあって、やはり他書とは異なる魅力がある。その魅力は何かといえば、生き方を見つめるうえで大切なことが、脳科学の知見をまじえながら語り合われているところではないだろうか。

もちろん、生き方を見つめる、というような堅苦しさなど対談のどこにもない。そのようなテーマを設けて語り合われているわけでもない。しかし本書を読み終えると、生き方を見つめるうえでヒントになるようなことが詰まっている本という感じが残る。

対談の話題は多彩なのだが、糸井重里がこの対談の切り口としたのは、「コミュニケーションの能力」だ。本書の最初のほうでこう述べている。「コミュニケーションの能力を高めるにはどうすればいいか、という観点から池谷さんの話をお聞きしたいです」と。

この対談は、「総十三時間にもおよぶ」対談だったようだ。池谷裕二は「あとがき」で、こう述べている。「総十三時間にもおよぶ持久戦のような今回の対談だったが、なぜか不思議なくらいアッという間に感じられた。それほど内容が充実していた。紙面の都合で、そのすべてを本書に記載できないのは残念だが、対談の本質は本文に十分集約されている」と。

この長時間におよぶ対談のため、本書は編集がなされているが、対談のおもしろさは損なわれていない。「章のまとめ」もある。この「章のまとめ」のなかの小見出しをいくつかご紹介してみる。

「脳の本質は、ものとものとを結びつけること」、「三〇歳を過ぎてから頭はよくなる」、「脳は疲れない」、「脳に逆らうことが、クリエイティブ」などなど。他にもたくさんある。

糸井重里は「ほぼ日」のなかで何度も、「ひとつのことを毎日、一〇年くりかえしさえすれば、才能があろうがなかろうがモノになる」という言葉を紹介している。本書にもその話が登場し、この言葉を脳科学の見地から語り合っている。

コピーライターとして名を成した糸井重里なので、「クリエイティブ」に関する話題はやはりおもしろい。「クリエイティビティも、一種のテクノロジー」というような言葉も飛び出す。

池谷裕二の考えを知るなら、『進化しすぎた脳』『単純な脳、複雑な「私」』など他書の方がよい。本書のおもしろさは、糸井重里が脳の知見に耳を傾けながら巧みに話を展開し、生き方に結びつけて語り合うところにある。

本書の単行本は、2002年に朝日出版社より刊行され、メディアでも何度もとりあげられた。この単行本の内容(第1章から第4章、2002年の対談)に、追加対談(2005年の対談)をプラスして文庫化されている。

ひとこと

池谷裕二の専門である脳部位「海馬」がタイトルになっているが、本書は「海馬」や「脳のしくみ」を知るための本ではない。脳の知識を得る本というよりも、自分の考え方や行動などを省みるきっかけが得られる本といえる。

初投稿日:2015年03月01日

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