アントニオ・R・ダマシオの本、どれを読む?

「アントニオ・R・ダマシオ」メイン画像

「脳」だけでなく「身体」も重要視した独創的な論考が魅力

アントニオ・R・ダマシオ(Antonio R. Damasio)は、著名な神経学者であり、「情動」の研究者として名を世界に馳せている。合理的な意志決定には「情動」と「感情」が不可欠であるという「ソマティック・マーカー仮説」は有名だ。

情動と感情は似た言葉だが、ダマシオの本では独特の定義がなされ、明確に使い分けられている。また、オリジナル用語が導入されることも多く、独創的に自説を論じるところが、ダマシオの本の特徴のひとつ。

ダマシオが重要視しているのは、「脳」と「身体」は強く相互作用している分離不可能なものであるということ。「脳」と「身体」は分離不可能な「有機体」を形成しており、そして有機体は「環境」と強く相互作用している。自説を論じる際のこの視点が、ダマシオの論考のおもしろさだ。

情動、感情、意識、自己といったトピックに興味のある方であれば、ダマシオの本はきっと楽しめる。しかし、その楽しみには忍耐がともなう可能性が高い。おそらく、読むのは大変だ。それでも、心の不思議を神経科学の知見に基づいて考えてみたい方には、おすすめの著者。

「ダマシオ」の発音について。当サイトでは書籍同様「ダマシオ」としているが、ポルトガル語としては「ダマジオ」がより正確だそうだ。(ちくま学芸文庫『デカルトの誤り』の「訳者あとがき」を参照)

アントニオ・R・ダマシオの書籍

本記事投稿時点(2015年5月17日)で、アントニオ・R・ダマシオの著書は下記4冊(文庫『デカルトの誤り』と単行本『生存する脳』は1冊とした/日本語版のみ)

前著で論じた「意識の構築」の仮説を〝補足修正〟した『自己が心にやってくる

これまでの著者の見解をまとめつつ、前著『無意識の脳 自己意識の脳』で展開した仮説を〝補足修正〟したもの。ダマシオは「出直し」と述べている。

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自己が心にやってくる

「感情の神経生物学」の本、見方をかえれば、神経生物学の見地からスピノザを論じることを試みた本『感じる脳

これまでのダマシオの仮説などをまとめつつ、「感情」と「スピノザ」に焦点をあてて論じたもの。「感情の神経生物学」の本ではあるが、著者のこころはスピノザを描くことにあるように思える。原題は『Looking for Spinoza』(副題は省略)

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感じる脳

意識とは何か、意識はどのように構築されるのかを、自己に焦点をあてて論じた『無意識の脳 自己意識の脳

意識を論じるに際して、「脳」だけで考えず、「身体」も重要視している。オリジナルの用語を導入して、意識の構築プロセスを独創的に描き出している。意識は、ある種の特別な感情としてはじまるという見解がおもしろい。読み応えのある一冊。クオリア問題については論じられていない。

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無意識の脳 自己意識の脳

合理的な意志決定には「情動」と「感情」が不可欠であるという「ソマティック・マーカー仮説」を論じ、また心と自己の深淵にも迫る世界的ベストセラー『デカルトの誤り

情動や感情と理性の関係を論じ、また心と自己の深淵にも迫る世界的ベストセラー。現在の「さまざまな形のデカルト的誤謬」を懸念し、「脳」と「身体」が分離不可能であることを強く主張している。

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デカルトの誤り

アントニオ・R・ダマシオの本、どれを読む?

おすすめは、『デカルトの誤り』。ダマシオの主張の核心は、この本だけでわかる。第10章「身体志向の脳」に興味をもったら『無意識の脳 自己意識の脳』を読むのがよいと思う。この2冊でダマシオの主張を十分に理解できる。

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デカルトの誤り

アントニオ・R・ダマシオ profile

デカルトの誤り』(ちくま学芸文庫)より(一部省略して)引用

1944年、ポルトガルのリスボン生まれ。アメリカの神経学者・心理学者。1976~2004年、アイオア大学教授を経て、2005年には南カリフォルニア大学のBrain and Creativity Instituteを設立した。Prince of Asturias Awardsなど多くの賞を授与され、世界中でもっとも読まれ、活躍している神経学者。

初投稿日:2015年05月17日

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