記憶力の脳科学

書籍情報

【単行本】
No image
著 者:
柿木隆介
出版社:
大和書房
出版年:
2015年11月
定 価:
本体1,400円+税

「脳指紋」にまつわる解説が読みどころ。〝ハウツー本〟的な内容も多め

記憶と一口に言っても、学術的にはさまざまな記憶に分類されている。本書では、まず、その記憶の分類を説明する。そして、ある高校生の1日を描いて、その行動をとおして、さまざまな記憶を見ていく。そのあとで、「記憶法」と「記憶術」について述べていく。これが第1章から第3章までの内容で、およそ100ページ(本書の半分程度)。そのうちの約60ページは、私の印象では、〝ハウツー本〟的な内容。

続く、第4章が本書の中核だろう。著者・柿木隆介の専門である「脳指紋」についての解説。著者はこう述べる。「脳指紋は、脳の中の記憶を目に見える形で取り出そうという研究ですので、記憶の本質に迫る重要な示唆をたくさん与えてくれます」

脳指紋は、本書のなかで、「記憶にもとづくうそ発見器」、「脳波を使ったうそ発見器」などと記されている。第4章では、「うそ発見器」の話から始めて、「脳波」を簡単に説明し、そして「P300」を説明する。つぎのように述べている。

「持続して出現する背景脳波とは異なり、P300のように、何らかの刺激によって生じる(誘発される)脳波反応は、「事象関連電位」と総称されています」。「P300の「P」はpositive(陽性)という意味です。「300」は300ミリ秒(0・3秒)を意味します。特殊な方法を用いて聴覚刺激や視覚刺激が与えられると、その後、約300ミリ秒後に大きな反応が出現します。これがP300です。……略……」

また、P300が「脳の老化現象の簡単な指標になる」ことなどを述べる。

それから、つぎのように記す。

「その後の研究で、P300は、以前に記憶していたものを見たり聞いたりした時にも出現することがわかりました。自動的に脳内で保存された記憶と照合して出現するのです。しかも、その記憶が強烈であればあるほど、P300は出現しやすくなります」

そして著者は、一番強烈な記憶を残すものとは何か、個人差はあるが「犯罪はその最たるもの」と記し、音成龍司がP300を用いて行った「模擬犯罪形式の実験」を説明していく。P300検査の結果だけで、模擬犯人を当てるという実験だ。

このあと、「脳指紋」の命名の話題などを紹介し、さらに、「覚えていない記憶」に対して脳指紋は反応するのかどうかを見ていく。著者は脳指紋をテレビで実演したそうで、その実験の話を2つ紹介している。被験者のひとりは、ロンドンブーツ1号2号の田村淳、もうひとりは、女優の松本若菜。

P300反応の有用性はすでに確立されているという。では、問題点はないのか? このことを語るうえでは、「今でしょ」で有名になった林修を被験者にした実験が紹介されている。

このいくつもの実験の話を交えながら、脳指紋検査の有用性と問題点を語っていくところが、本書の読みどころだろう。

この章の最後では、「脳指紋は犯人が本当に見たもの、聞いたものを当てていく方法」なので、「むしろ本当発見器というべきではないか」という音成龍司の意見を紹介している。著者の柿木隆介も同意見だそうだ。

第5章は「顔認知」について、第6章は「認知症」について、第7章は記憶にまつわるQ&A。

ひとこと

専門用語があまり出てこない気楽な読み物。

初投稿日:2018年01月27日

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