脳はなにげに不公平 ——パテカトルの万脳薬

書籍情報

【単行本】
No image
著 者:
池谷裕二
出版社:
朝日新聞出版
出版年:
2016年3月
定 価:
本体1,300円+税

「週刊朝日」の連載エッセイ「パテカトルの万脳薬」をまとめたもの。著者・池谷裕二らの論文を紹介したエッセイも登場する

本書は、「週刊朝日」の連載エッセイ(2012年1月6–13日号から2013年7月26日号に掲載)をまとめたもの(62回分)。1回分は、約3ページ。著者は、「いずれも最新の科学論文を、私の解釈を加えながら紹介するというスタイルをとっています」と述べている。

最初のエッセイでは、著者・池谷裕二らの論文のエッセンスを紹介している

池谷裕二らの論文は、「不平等な世界のほうがシステムはうまく動く」と主張するものだという。「もちろんヒト社会に、この脳回路の真実を、単純に当てはめてはいけません。歴史を見返せばわかります」と警告もしている。「この脳回路の真実」とはどのようなものか。

神経細胞をつなぐシナプスには強弱があるそうだ。調べてみると、「強いシナプスと弱いシナプスには100倍もの強度差がある」ことがわかったという。そして、こう述べる。「さらに重要な事実があります。強いシナプスはごく一握りで、その他の大多数は弱いシナプスだったのです。これは、ヒト社会の年収の分布の形と、ほぼ一致しました」と。そして、「不公平な分布に、どんな意味があるのでしょうか」と話を展開していく。「脳においては、不平等な社会のほうが長期安泰」だそうだ。

「脳細胞は年を取っても減らない」というタイトルのエッセイがある

「広く知られている誤解」があるという。それは、「年を取れば取るほど神経細胞が減っていく」というものだそうだ。「この都市伝説は正しくありません」と述べている。

重要なことを、こう繰り返す。「もう一度書きます。「3歳以降、神経細胞数はほぼ一定です」。これは大切なことです。解剖組織学的にみれば脳は衰えてはゆきません」

とはいえ例外もあるそうで、「海馬の神経細胞は逆で、なんと増えるのです」と述べ、この説明をしていく。

(「アルツハイマー病などの認知症では、たしかに神経細胞が脱落」するが、これは病気だと述べている。「現実には、認知症を発症しない人のほうが多いのです」とも記している)

「白い音、白い匂いとは?」というタイトルのエッセイがある

「白色」の話から、「白い音」の話へ。こう説明している。「様々な音程を混ぜると「白」になります。いわゆる「白色雑音(ホワイトノイズ)」と呼ばれる音です。チャネルの合っていないラジオから流れるザーというノイズは白色雑音です。音の「白さ」とは、あんな質感なのです」。この考えは、嗅覚にも応用できるそうだ。「匂いの白さ」に関する論文を紹介している。

「死んだら心はどうなるか」というタイトルのエッセイがある

「死んだら心はどうなるか」という問いは、「「心身二元論」的に問うべきではなく、「心魂身三元論」として捉えるのが正しいのかもしれません」と述べている。

「心」には二つの側面があって、それは、「英語で表現すれば「マインド」と「ソウル」に対応する二つ」だという。この二つについて、こう説明している。「マインドは学習や経験によって変化するモノです。一方、ソウルは変わらないナニかです。「魂」と言ってよいかもしれません」と。

「いわゆる「一元論vs.二元論」の論争は、古来重要な論争となっています。いまだ決着をみません。いや、今後も解決されないかもしれません」と述べた後で、「心魂身三元論」を語っている。

他に、つぎのようなタイトルのエッセイがある

「顔は性格を反映する」、「好調な人の運は伝染する」、「人の心を動かす〝言葉〟とは?」、「リフレッシュして記憶力アップ」、「「脳の活性化」は本当にいいの?」、「脳のデフォルトモード」、「感情は表情よりも身体に表れる」、など。

ひとこと

連載エッセイのコーナーの名称が、「パテカトルの万脳薬」

パテカトルについて、著者は、つぎのように記している。「パテカトルはアステカ文明の神話に登場する神です。酒の神、ひいては「薬」をつかさどる神として古代メキシコで崇められていました。その謎めいた存在が、脳そのものの不可思議さを彷彿とさせ、薬学部で脳の研究をしている私には、とくにお気に入りの古代神です」

初投稿日:2017年08月16日

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