触れることの科学 ——なぜ感じるのか どう感じるのか

書籍情報

【単行本】
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著 者:
デイヴィッド・J・リンデン
訳 者:
岩坂彰
出版社:
河出書房新社
出版年:
2016年9月
定 価:
本体1,800円+税

読み物として楽しみながら、触覚に関する多彩な知見を得ることができる本

人間の感覚のうち、最初に機能し始めるのは「触覚」のようだ。「胎児で最初に機能し始める感覚は触覚だと考えられている」。それは、妊娠の第8週前後らしい。

触れ合いは発達においてとても大切なもので、「触れ合い不足が深刻な乳児や未熟児は、さまざまな発達障害を発現する」ことが数多くの研究から明らかにされている。

人間だけでなく、C・エレガンスという小さな線虫のような「単純で、母親による子育てとも無縁で、触覚ニューロンが6つしかない生物でさえ、触覚刺激が身体と神経系の発達に重要な役割を果たし、その影響が生涯持続する」という。

また、たまたま手に触れたもの(温かいコーヒーか冷たいコーヒーか、固いものか柔らかいものか、など)が、人の印象や人間関係のあり方に影響を及ぼすことがあることを示す実験が紹介されている。

皮膚には基本的に有毛皮膚と無毛皮膚の2種類があること、それぞれの構造的な違いなどが説明され、さらに皮膚にある4種類のセンサー、「質感を識別するメルケル盤」「握る力を調整するマイスナー小体」「振動に敏感なパチニ小体」「引っ張りを感知するルフィニ終末」が説明される。そこから点字の話題となる。点字を識別する際に働いているのは、4つのうちメルケル盤だそうだ。ここではブライユ点字にまつわる真面目な話もあれば、「股間で点字が読めるか」というユニークな話題もある。

著者は、「C触覚線維」と呼ばれる神経を「人と人との接触に特化した、いわば愛撫のセンサー」と表現する。「健常者の前腕や大腿を速度を変えて撫でる実験」が行われた。「被験者が最も心地よいと報告した速度は、毎秒3~10センチの範囲だった。この範囲は、C触覚線維が最も強く活動する範囲と正確に一致している」。ここでは、Aα線維、Aβ線維、Aδ線維、C線維について説明される。

リンデンの著書ではおなじみとも言える「オーガズム」の話題も登場。

皮膚は、ミントを冷たいと感じ、トウガラシを熱いと感じる。ミントの主な有効成分はメントールで、トウガラシの主な辛み成分はカプサイシン。「皮膚の表皮には、細胞膜の表面にTRPV1というセンサーを持つ自由神経終末がある(図2-3)。このセンサーは1個のタンパク質分子で、熱にもカプサイシンにも反応してイオンチャネルを開く。……略(イオンチャネルの説明)……。同様にTRPM8というセンサーを持つ自由神経終末は、メントールと冷たさの両方に反応する」。ここでは、「TRPファミリー」について解説している。

「痛み」の話題。認知的、感情的な痛みの調整にまつわる説明がある。著者は「真に驚くべき事実」として、こう記している。「脳は、受け取る情報を支配している」と。「……略……神経線維を通じて脳から情報を送り、脊髄からどの感覚情報を受け取るかをコントロールしている」という。

ざっと紹介したが、他にも「痒み」など、さまざまな話題が登場する。

ひとこと

読み物としてのおもしろさと学びの要素がバランスよく盛り込まれた一冊。NDC分類「141」(大分類は心理学)だが、当サイトでは「脳/医学」に入れた。

初投稿日:2018年10月15日

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