利己的細胞 ——遺伝子と細胞の闘争と進化

書籍情報

【単行本】
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著 者:
帯刀益夫
出版社:
新曜社
出版年:
2018年4月
定 価:
本体2,600円+税

細菌や遺伝子や真核細胞にまつわる多彩な知見が得られる本

『利己的細胞』という書名を見てリチャード・ドーキンスの『利己的遺伝子』を思い浮かべる人も多いのではないだろうか。実際、本書では『利己的遺伝子』に対する反論を試みており、「利己的なのは遺伝子ではなくて、細胞である」と論じている。とはいっても、その議論に本書全体が費やされているわけではなく、どちらかといえば本書の一部が反論に費やされている、という感じ。

第1章では、プラスミドやバクテリオファージと細菌との闘争というかたちで、その関係について見ていく。ほかに、「クオラムセンシング」など、細菌にまつわるさまざまな知見が紹介される。

第2章は、細菌世界の進化について。細菌世界の進化を進めた大きな要因として、「遺伝子の水平伝搬、重複化、突然変異の正の選択」があるという。

第3章では、「真核細胞」の誕生について論じている。ここでは、古細菌と真正細菌が融合して真核細胞が成立したという説を紹介している。また、「Ⅱ型イントロンが、真核生物の核膜の出現や染色体の特徴的な構造を生み出す原因になっていた」というマーチンとクーニンの仮説を紹介している。ほかに、「レトロトランスポゾン」などの話題がある。

第4章の章題は、「真核細胞の寿命と死」。ここでは、「アポトーシス」の話題などを紹介している。

第5章は、生殖細胞と体細胞、脳(神経)細胞、がん細胞、ES細胞、iPS細胞について。

第6章は、ゲノム編集にまつわる話題。ここでは、「マラリアを撲滅する計画」などを紹介している。「マラリアの撲滅を目指して、媒介する蚊の集団を遺伝学的に操作、あるいは根絶するという方向で3つの研究成果」があるという。

第7章では、「始原細胞」の誕生について論じている。

第8章の章題は、『「利己的遺伝子」仮説から「利己的細胞」仮説へ』。「これまでのまとめ」があり、その後で、『利己的遺伝子』に対して反論している。そして、「エピローグ」へ。

著者は、「あとがき」でつぎのように述べている。

「……本書では、遺伝子(最初はRNA様分子)と簡単な膜カプセルとしてスタートした始原細胞が、細菌や真核細胞へと進化してゆく細胞進化の過程を、遺伝子の進化として追跡してみました。筆者の最初の研究テーマは「コリシンE2による大腸菌のDNA分解」というもので、細菌を相手の研究でしたが、その後真核生物の細胞分化の仕事に移ってきたので、最近の科学論文を読みながらの作業は、自分の研究経歴を辿ることにもなり、楽しい作業でした。」

ひとこと

利己的遺伝子とか利己的細胞とか、そういったことは気にせず純粋に、〝細菌や遺伝子や真核細胞にまつわる多彩な知見が得られる本〟として読んだほうが面白いのではないか、と私は思った。

初投稿日:2019年05月14日

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