これが物理学だ!
著 者:
ウォルター・ルーウィン
出版社:
文藝春秋
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デカルトの誤り
著 者:
アントニオ・R・ダマシオ
出版社:
筑摩書房
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宇宙を創るダークマター
著 者:
キャサリン・フリース
出版社:
日本評論社
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意識と自己
著 者:
アントニオ・R・ダマシオ
出版社:
講談社
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物理学者のすごい思考法
著 者:
橋本幸士
出版社:
集英社インターナショナル
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量子革命
著 者:
マンジット・クマール
出版社:
新潮社
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宇宙創成

書籍情報

【新潮文庫 上巻】
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著 者:
サイモン・シン
訳 者:
青木薫
出版社:
新潮社
出版年:
2009年2月
【下巻】
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著 者:
サイモン・シン
訳 者:
青木薫
出版社:
新潮社
出版年:
2009年2月

メインテーマはビッグバン宇宙論。人気を博するサイモン・シンが、科学者たちの素顔を巧みに描き出しながら、宇宙論の変遷を辿る

『フェルマーの最終定理』でその筆力を世に示したサイモン・シンが、科学者の素顔を巧みに描き出しながら、宇宙論の変遷を辿る。本書は2006年に刊行された単行本『ビッグバン宇宙論』を改題し文庫化したもの。その単行本表題が表わすように、本書の中心となっているのはビッグバン宇宙論だ。

宇宙論の変遷を辿る本はいくつもあるが、やはり著者サイモン・シンにより取捨選択されたエピソードで構成された本書はおもしろい。

たとえば、フレッド・ホイルの活躍を描いたエピソードがある。ビッグバン理論の話題で、ホイルといえば、反ビッグバンの立場にたち「定常宇宙モデル」を唱えたこと、そして「ライバル理論を嘲るために」ビッグバンという言葉を使い、ビッグバン理論の「名付け親」になってしまったこと、この二つがよく紹介される。本書はこの話題のほかに、結果的にビッグバン・モデルの後押しになってしまった「重い元素の合成」の問題に取り組むホイルのエピソードがとりあげられている。ホイルの天才を感じさせるエピソードだ。

「ビッグバン・モデル」が現在広く受け入れられているのは「具体的な証拠」によって裏づけられているからだ。その証拠のひとつとされるのが、「水素とヘリウムの存在比」であり、この研究に取り組んだ人物として有名なのが、ジョージ・ガモフ。著者は、ガモフとともに研究に従事し重要な貢献をなしながら、ガモフの陰に隠れてしまった感のあるラルフ・アルファーにスポットライトをあてている。

そしてもうひとつ、ビッグバンの強力な証拠とされているのが、「光によるビッグバンのこだま」である「宇宙マイクロ波背景放射(CMB放射)」だ。ガモフ、アルファー、ロバート・ハーマンは「精密な計算を行い」、このCMB放射は今も検出できると予測した。後に、この検出に成功したのが、アーノ・ペンジアスとロバート・ウィルソンで、この話題ももちろん登場する。

ビッグバン・モデルを語るうえで、膨張宇宙の発見の話題は欠かせない。エドウィン・ハッブルをはじめ、この発見につながるさまざまな貢献をなした人物たちの活躍が描かれている。

ビッグバン・モデルの生みの親ともいえるジョルジュ・ルメートルのエピソードも豊富。アルベルト・アインシュタイン、アレクサンドル・フリードマン、ルメートル、という流れで解説される。静止する永遠の宇宙モデルが信じられていた時代に、膨張する宇宙モデルが登場してくる物語だ。

本書が描きだしているのは、古代の宇宙観から、COBE衛星による「宇宙マイクロ波背景放射」の観測まで。

当然ながら、コペルニクス、ティコ・ブラーエ、ケプラー、ガリレオなどの活躍も描かれる。古代では、「地球の大きさを測るという偉業を初めて成し遂げた」エラトステネスや、「太陽中心の宇宙像」を唱えたアリスタルコス、「地球を中心とするプトレマイオスの宇宙モデル」などが紹介されている。

エピローグで少しだけ、インフレーション理論、暗黒物質、暗黒エネルギー、人間原理、マルチバースに触れている。

ひとこと

ビッグバン宇宙論がよくわかる。科学者たちの素顔を巧みに描き出しているところが本書の魅力だが、エピソードが豊富ということもあって、ページ数は膨大。上巻387頁、下巻374頁。もっと簡潔に宇宙論の変遷を辿りたい方は、佐藤勝彦の『眠れなくなる宇宙のはなし』がおすすめ。

初投稿日:2015年03月08日

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