量子革命
著 者:
マンジット・クマール
出版社:
新潮社
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デカルトの誤り
著 者:
アントニオ・R・ダマシオ
出版社:
筑摩書房
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生物と無生物のあいだ
著 者:
福岡伸一
出版社:
講談社
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進化しすぎた脳
著 者:
池谷裕二
出版社:
講談社
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重力とは何か
著 者:
大栗博司
出版社:
幻冬舎
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ブラックホール
著 者:
マーシャ・バトゥーシャク
出版社:
地人書館
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数学する身体

書籍情報

【単行本】
No image
著 者:
森田真生
出版社:
新潮社
出版年:
2015年10月
【新潮文庫】
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著 者:
森田真生
出版社:
新潮社
出版年:
2018年5月

身体をキーワードにして、「数学とは何か」「数学とは何であり得るか」を探究する一冊。著者が光を当てたのは、「数学を通して「心」の解明へと向かった」数学者・岡潔

もし私が数学のことを少しでもわかっていれば、著者がどのように数学を捉えているのか、うまく掴めたのかもしれない。けれども数学のことを知らない私には、著者が見ている数学の風景は見えなかった。にもかかわらず、おもしろかった。「数学研究が即ち自己研究」というのがおもしろかったのだ。〝数学とはいったいなんだろう?〟という数学への興味が喚起され、そして、岡潔という数学者のことを知りたくなった。

著者は、岡潔という数学者に心酔している。岡の『日本のこころ』という本に巡り合ったことがきっかけとなり、数学に夢中になったという。東京大学の文系の学部から数学科に転向し、現在は、大学などの研究機関には所属せずに「独立研究者」という肩書きで研究をしている。

著者は何を研究しているのか? それは、数学を通した「自己研究」、すなわち「私とは何か」「心とは何か」というような哲学的な問いを、数学を通して探究しているみたいだ。私とは何かという問いと、数学とは何かという問いは、オーバーラップするようだ。「数学研究が即ち自己研究」ということで、これは、岡潔が辿った道だ。

もう少し正確に書くと、著者は、「数学とは何か」と問うことから、いつしか「数学とは何であり得るか」と問うようになった。それは、「変容し続ける」という点に目を向けるようになったということのようだ。そのような著者の研究の中核をなすのは「身体」

少し長くなるが、身体と数学に関する記述を紹介したい。

「……略……人間の身体は、どれほど豊かな「計算」の可能性を内蔵しているかわからない。……略……人間の認知は、身体と環境の間を行き交うプロセスである。その結果として、記号化された計算によっては到底追いつかないような判断や行為が瞬時になされる。昆虫が不安定な大地の上を歩きまわったり、人間が巧みに物を掴んだり持ち上げたりできるのも、すべては「身体化」された、非記号的な認知の成せる業である。数学的思考もまた、この例外ではないはずだ」

「記号的な計算は、数学的思考を支える最も主要な手段の一つであることは間違いないが、数学的思考の大部分はむしろ、非記号的な、身体のレベルで行われているのではないか。だとすれば、その身体化された思考過程そのものの精度を上げる――岡の言葉を借りるなら「境地」を進める――ことが、ぜひとも必要ということになる」

もう一つ引用したい。

「二〇世紀の数学は、数学を救おう、よりよくしようという思いの帰結とはいえ、行き過ぎた形式化と抽象化のために、実感と直観の世界から乖離していく傾向があった。そうしたなかで岡は、「情緒」を中心とする数学を、心の中で理想として描いた。数学を身体から切り離し、客観化された対象を分析的に「理解」しようとするのではなく、数学と心通わせ合って、それと一つになって「わかろう」とした」

岡潔の「情緒」、アンディ・クラークの「認知は身体と世界に漏れ出す」、フォン・ユクスキュルの「環世界」、芭蕉の「松のことは松に習え」、など、多彩な知見を織り込みながら、著者は論じていく。

本書は、数学の歴史を辿り、「数学を通して「心」の解明へと向かった」二人の数学者に光を当てた。その一人は、岡潔。もう一人は、アラン・チューリング。心を解明するための二人のアプローチは異なっていた。

「チューリングが、心を作ることによって心を理解しようとしたとすれば、岡の方は心になることによって心をわかろうとした」

チューリングは、人間の心を「玉ねぎの皮」に喩えて語り、岡は心を論じるとき、「種子を語った」

ひとこと

数学エッセイというよりは、数学を主題に据えた哲学エッセイという印象をもった。いつか(たぶんずっと後になりそうだが)、岡潔の『日本のこころ』を読んでみようと思う。

初投稿日:2018年04月20日

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