ドーキンス博士が教える「世界の秘密」
書籍情報
- 著 者:
- リチャード・ドーキンス[著]/デイヴ・マッキーン[画]
- 訳 者:
- 大田直子
- 出版社:
- 早川書房
- 出版年:
- 2012年12月
子供たちに、科学の魅力を伝える本
本書は、リチャード・ドーキンスの文章とデイヴ・マッキーンのイラストで、子供たちに科学の魅力を伝えることを試みたもの。著者ドーキンスの専門分野である「進化」をはじめ、元素、重力、星、虹、ビッグバン、地球外生命、プレートテクトニクス、寄生生物など、内容は多彩だ。
私は、ざっと目を通しただけだが、大人も楽しめる内容という印象を持った。
この本の構成についての著者の言葉があるので、それを紹介したい。こう述べている。「この本ではほとんどの章題が疑問文になっている。私が目指しているのはその疑問に答えること、というか、少なくともできるかぎり最善の答えを出すこと。それは科学による答えだ。しかし原則として、まず神話による答えから始めるつもりだ。なにしろそういう答えは生き生きしていておもしろいので、ふつうの人々は本当だと信じてきた。いまだに信じている人もいる」
たとえば、章題には、つぎのようなものがある。「最初の人間は誰だったのだろう?」「なぜ夜と昼があり、冬と夏があるのだろう?」「すべてはいつ、どうやって始まったのだろう?」、など(全12章)
このような構成にした著者の狙いは、神話による答えもおもしろいけれど、科学による答えは、〝もっと、おもしろいよ〟と子供たちに伝えるためではないだろうか。結びの言葉を読んで、私はそう思った。著者は、つぎのように記している。
「奇跡、魔法、そして神話――どれも楽しいし、この本でも楽しんできた。誰でもおもしろい話は好きだ。大部分の章で最初に取り上げてきた神話を、あなたも楽しんでくれたと思う。しかし、すべての章で神話のあとの科学を楽しんでくれたなら、私としてはもっとうれしい。真実には真実のマジックがあることに、あなたも賛成してくれるだろう。真実は神話より、推理小説より、奇跡より、もっと――一番いい意味で、一番わくわくする意味で――摩訶不思議だ。科学には科学のマジックがある。それが「現実のマジック」なのである」
「現実のマジック」の「現実」を、大きくて太い文字にして、強調している。
この本の原題は、「The Magic of Reality」(『現実のマジック』)だそうだ。
書名に関して、最初のほうに説明がある。「マジック」という言葉は、「3通りの意味でよく使われる」と述べ、それを区別する。著者は、その3つを、「超自然のマジック」「ステージ・マジック」「詩的なマジック」と呼び、それぞれについて説明する。そして、こう述べる。「私がこの本で示したいのは、現実――科学的手法によって理解される現実世界の事実――は第3の意味で、詩的な意味で、生きるとはすばらしいという意味で、マジックだということだ」と。
ひとこと
カラー印刷。大型本。家で子供が読む、そのような本だろうか。当サイトのジャンル分類では、「生物」「宇宙科学」「物理」に入れた。