これが物理学だ!
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ウォルター・ルーウィン
出版社:
文藝春秋
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デカルトの誤り
著 者:
アントニオ・R・ダマシオ
出版社:
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宇宙を創るダークマター
著 者:
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出版社:
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意識と自己
著 者:
アントニオ・R・ダマシオ
出版社:
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物理学者のすごい思考法
著 者:
橋本幸士
出版社:
集英社インターナショナル
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量子革命
著 者:
マンジット・クマール
出版社:
新潮社
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ホーキング、宇宙を語るーービッグバンからブラックホールまで

書籍情報

【ハヤカワ文庫NF】
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著 者:
スティーヴン・W・ホーキング
訳 者:
林一
出版社:
早川書房
出版年:
1995年4月

難しいけれど、読者の好奇心を掻き立てる、世界的ベストセラー。本書には、著者ホーキングが行なった「重力の量子論」の探究が記されている

スティーヴン・W・ホーキングは、世間に最もよく知られている科学者の一人だろう。そのホーキングが一般に向けて書いた最も有名な本が、本書『ホーキング、宇宙を語る』だ。

この本は、「小柄な老婦人」の言葉から始まる。ある有名な科学者が行なった天文学についての講演終了後に、老婦人はこう言ったそうだ。

「あなたのおっしゃったことは、みんな馬鹿げていますわ。本当は、世界は平たい板みたいなもので、大きな亀の背中に乗っているんですもの」

老婦人と科学者とのやりとりを記した後で、著者ホーキングは、つぎのように述べる。

「無限に積み重なった亀の塔という宇宙像をたいていの人は、ひどく滑稽に感じるだろう。でも、なぜ私たちのほうが老婦人よりも宇宙をよく知っていると言えるのか? 私たちは宇宙について何を知っているのか? それをどのようにして知ったのか? 宇宙はどこから来てどこへ行こうとしているのか? 宇宙にははじまりがあるのか、またあるとすれば、それ以前[傍点:以前]に、どういうことが起こったのか? 時間の本性とは何か? 時間にはいったい終わりがあるのか?」

「このような長年の疑問に、いくつか答らしいものを出せるようになった」という。その答は、いずれ「わかりきったことに思える」かもしれないし、「ひょっとして、亀の塔と同じくらい滑稽に見えるようになるかもしれない」と述べている。

この導入部から、アリストテレス(紀元前340年頃)、プトレマイオス(2世紀頃)の話題へと展開し、さらに、コペルニクス、ケプラー、(ガリレオ・)ガリレイ、ニュートン、ハッブル、という流れで、宇宙像の変遷を辿る。聖アウグスチヌス、哲学者カントなどの話も織り込まれている。

その後で、こう述べる。「宇宙の本性について語り、それにはじまりあるいは終わりがあるかといったような問題を論じるには、科学理論とは何であるかをはっきりさせておかなければならない」と。理論とは何か、よい理論とはどのようなものかを論じていく。

そして、「科学の最終的な目標」について語る。「科学の最終的な目標は、全宇宙を記述する単一の理論を提供することにある。……略……」。だが、「宇宙をひとまとめに記述する理論を考えだすのがたいへんむずかしいことはわかっている」という。では、どうしているのか? つぎのようなことを述べている。

「……略……問題を小さな部分に分割し、いくつかの部分理論を構築する……略……」。「今日の科学者は、二つの基礎的な部分理論を用いて宇宙を記述している。その二つとは一般相対性理論と量子力学である」。「重力と宇宙の大局的な構造を記述する」一般相対性理論と、「極度に小さな尺度の現象を扱う」量子力学は、「たがいに矛盾することがわかっている」。「この二つを取りこんだ新しい一つの理論――重力の量子論――の探究、これが今日の物理学の大きな目標の一つであり、本書の重要な主題である」

本書には、著者ホーキングが行なった「重力の量子論」の探究が記されている。その探究にまつわるスローガン的な言葉を本書から拾ってみると、一つは、「ブラックホールはそれほど黒くない」、もう一つは、「宇宙の境界条件は、それが境界をもたないということだ」、の二つだろうか。

「ブラックホールはそれほど黒くない」。ホーキングは、「暗黒」というブラックホールの描像を覆した。

一般相対性理論によると、ブラックホールは何も放出しない。これが、それまでの見解だった。

ところがホーキングは、「ブラックホールは熱い物体のように放射を行なう」ことを導き出した。ブラックホールは放射を行ない、「蒸発」すると論じたのだ。「ブラックホールからの放射という考えは、今世紀のもっとも偉大な理論である一般相対論と量子力学の両方に本質的にもとづいた予測の最初の例である」という。

「宇宙の境界条件は、それが境界をもたないということだ」。この言葉は、ホーキングが提案した「無境界説」を論じるなかで登場した。「時間と空間はいっしょになって、大きさは有限だがどんな境界も縁ももたない一つの曲面を形づくっているかもしれない」と語る。

「アインシュタインの一般相対性理論には、宇宙にはじまりがあったはずだということ、そして終わりもありうることが暗黙裡に包含されている」。しかし、「重力の量子論が開いてくれた新しい可能性では、時空は境界をもつ必要がない」という。「宇宙が本当にまったく自己完結的であり、境界や縁をもたないとすれば、はじまりも終わりもないことになる」と述べている。

ホーキングが行なった「重力の量子論」の探究が語られる前に、一般相対性理論と量子力学のエッセンスが解説されている。

本書は、「時間の本性に対するわれわれの見方が時代とともにどう変わってきたか」を論じることを軸にして、宇宙にまつわる多彩な話題を解説している。

ひとこと

難しい話がたくさん出てくる本だが、宇宙のはじまりや終わりに興味がある方は楽しめるのではないだろうか。

単行本は、1989年6月に刊行された。

初投稿日:2017年08月26日

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