進化の意外な順序
著 者:
アントニオ・ダマシオ
出版社:
白揚社
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盲目の時計職人
著 者:
リチャード・ドーキンス
出版社:
早川書房
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ミラーニューロンの発見
著 者:
マルコ・イアコボーニ
出版社:
早川書房
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芸術と科学のあいだ
著 者:
福岡伸一
出版社:
木楽舎
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単純な脳、複雑な「私」
著 者:
池谷裕二
出版社:
講談社
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これが物理学だ!
著 者:
ウォルター・ルーウィン
出版社:
文藝春秋
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ジョセフ・ルドゥーの本、どれを読む?

「ジョゼフ・ルドゥーの本、どれを読む?」メイン画像

恐怖の脳内メカニズムの著名な研究者。科学の質を高いレベルに保った本格的な解説

ジョセフ・ルドゥー(Joseph E. LeDoux)は、ニューヨーク大学神経科学センターのヘンリー・アンド・ルーシー・モーゼス教授(『情動と理性のディープ・ヒストリー』より)。「情動」研究の第一人者であり、恐怖の脳内メカニズムの研究者としてよく知られている。脳部位では、とくに「扁桃体」を詳細に解説している。

執筆においては、一般読者を対象としたものであっても科学の質を高いレベルに保つようにしている。解説するトピックの内容だけではなく、そこに至るまでの研究の流れが把握できるように書いてあるのも著書の特色だ。

情動というトピックに興味があるなら、ぜひ読んでおきたい著者のひとり。恐怖の脳内メカニズムと関連する「不安」に興味がある方にとっても、有意義な知見をもたらしてくれる。

意識に関する理論のなかでは、「高次理論(HOT:Higher-Order Theory)」を支持しており、自身の意識理論も提唱している。

一般向けのあまりに簡略化された説明に物足りなさを感じている方で、専門書ほどの詳細な解説は不要という方には、ジョセフ・ルドゥーの本をおすすめしたい。

(日本語表記が「ジョゼフ・ルドゥー」「J.E.レドゥー」と著書によって一部異なるが、同著者)

ジョセフ・ルドゥーの書籍

2025年7月時点で、ジョセフ・ルドゥーの著書(日本語版)は以下のとおり。

四つの存在次元の「次元のアンサンブル」として、人間を捉える。自身の意識の理論を集大成的に論じている『存在の四次元』

四つの存在次元の「次元のアンサンブル」として、人間を捉える。進化を踏まえ、意識にまつわる研究史を織り込みながら、自身の提唱する意識の理論を説明する。(以下の『情動と理性のディープ・ヒストリー』から、自身の意識理論を発展させて、論を展開している)。

【単行本】
存在の四次元
著 者:
ジョセフ・ルドゥー
出版社:
みすず書房
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進化の歴史を概観し、著者が提唱する意識の理論を概説する『情動と理性のディープ・ヒストリー』

生命のはじまりから人類の誕生までを概観し、情動や認知について論じ、自身が提唱する意識の理論を概説している。最終章の章題は「生存は深いが、情動は浅い」。本書では、著者のこの見解が明らかにされている。神経科学者が進化の歴史を紹介しているので、神経系の進化が読みどころのひとつ。また、本書では、『エモーショナル・ブレイン』の内容に修正を加えている。

【単行本】
情動と理性のディープ・ヒストリー
著 者:
ジョセフ・ルドゥー
出版社:
化学同人
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「脳が自己をつくる生物学的メカニズムを探求」する『シナプスが人格をつくる』

シナプスとは「ニューロン間の小さな間隙」のことで、「あなたはあなたのシナプスだ」というのが本書の結論。この結論を読者に伝えるために、神経科学の基礎知識から丁寧に解説していく。自己というトピックに興味があり、それを還元主義的に考えてみたいという方にぴったりの本。

【単行本】
シナプスが人格をつくる
著 者:
ジョゼフ・ルドゥー
出版社:
みすず書房
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「情動」研究の発展を辿り、恐怖の脳内メカニズムを解説する『エモーショナル・ブレイン』

情動はどのように研究されてきたのか、また情動の進化はどのようなものか。そんなところから説き起こし、ジョセフ・ルドゥーの専門である恐怖の脳内メカニズムを解説する。「恐怖条件づけ」という研究手法や、「恐怖を扱う情動システムの中核」である扁桃体のことがよくわかる。

【単行本】
エモーショナル・ブレイン
著 者:
ジョセフ・ルドゥー
出版社:
東京大学出版会
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分割脳(分離脳)に関する知見が得られる本『二つの脳と一つの心』

M.S.ガザニガとの共著。1980年に出版。かなり前の本だが、左右の大脳半球をつなぐ脳梁が切断された「分割脳(分離脳)」について知ることができる。『シナプスが人格をつくる』によると、1970年代に、ガザニガはルドゥーの博士論文の指導教官だったそうだ。

【単行本】
二つの脳と一つの心
著 者:
M.S.ガザニガ/J.E.レドゥー
出版社:
ミネルヴァ書房
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ジョセフ・ルドゥーの本、どれを読む?

結論から言えば、ジョセフ・ルドゥーの見解を知りたいなら、2025年7月現在では、近年に出版された、『存在の四次元』『情動と理性のディープ・ヒストリー』の2冊を読むのが良いと思う。

ただ、恐怖の脳内メカニズムについて、ジョセフ・ルドゥー自身の研究および「扁桃体」の詳細な解説を交えながら論じているのは、『エモーショナル・ブレイン』。しかし、ルドゥーは、『情動と理性のディープ・ヒストリー』において、『エモーショナル・ブレイン』の内容に修正を加えている。そのため、『エモーショナル・ブレイン』のみを読むと、現在のルドゥーの見解と異なるように理解してしまう可能性がある。『情動と理性のディープ・ヒストリー』の第15部「情動的主観性」は、やはり読んでおきたい。

ルドゥーの著書はどれもボリュームがあるので、手に取るのをためらう方もいるかもしれない。『情動と理性のディープ・ヒストリー』は約400ページあるが、本書の前半は生命のはじまりから人類の誕生までを概観しているので、この前半はざっと読み進めて、後半のみを重点的に読むという読み方もできる。後半部分のみに集中するなら、約200ページの本を読むのとさほど変わらない(とはいっても、身の詰まった約200ページではあるが)。ボリュームがあるのでためらっている方なら、まずは、この後半を、〝ルドゥーの入門書として〟読んでみるのもあり。

もし、『情動と理性のディープ・ヒストリー』を読んで、恐怖の脳内メカニズムについてのルドゥー自身の研究に興味が湧いたら、『エモーショナル・ブレイン』を手にとる。そうすれば、現在のルドゥーの見解と異なるように理解してしまうこともないはず。

【単行本】
情動と理性のディープ・ヒストリー
著 者:
ジョセフ・ルドゥー
出版社:
化学同人
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〝ジョセフ・ルドゥーは著名な神経科学者だから、どれか一冊読んでみよう〟と思っているなら、2025年7月現在においては、最新刊の『存在の四次元』をおすすめしたい。自身の意識の理論を集大成的に論じていて、読み応えがある。『存在の四次元』は、意識の研究に興味がある高校生・大学生におすすめの本としても紹介している。

【単行本】
存在の四次元
著 者:
ジョセフ・ルドゥー
出版社:
みすず書房
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ジョセフ・ルドゥー profile

ニューヨーク大学神経科学センターのヘンリー・アンド・ルーシー・モーゼス教授であり、ニューヨーク大学のエモーショナル・ブレイン・インスティテュートのディレクターである。また、ニューヨーク大学ランゴン・メディカル・スクールの精神医学および児童・青年精神医学の教授でもある。

初投稿日:2015年01月11日最終加筆:2025年07月18日

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