免疫の守護者 制御性T細胞とはなにか
著 者:
坂口志文/塚﨑朝子
出版社:
講談社
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新しい免疫入門
著 者:
審良静男/黒崎知博
出版社:
講談社
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幸福感に関する生物学的随想
著 者:
本庶佑
出版社:
祥伝社
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免疫の意味論
著 者:
多田富雄
出版社:
青土社
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遺伝子が語る免疫学夜話
著 者:
橋本求
出版社:
晶文社
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美しき免疫の力
著 者:
ダニエル・M・デイヴィス
出版社:
NHK出版
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熱とはなんだろうーー温度・エントロピー・ブラックホール……

書籍情報

【ブルーバックス】
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著 者:
竹内薫
出版社:
講談社
出版年:
2002年11月

熱力学第二法則を中心テーマとして、熱力学・統計力学からブラックホールの熱力学・統計力学まで広く取り上げる

著者の竹内薫は、「物理学の大学院をでている」有名なサイエンス作家。

本書の特徴は、ブラックホールの熱力学・統計力学の話題に多くの紙面を割いているところ(およそ3分の1)。また、コラム形式の解説(設定した登場人物たちの会話による解説)が挿入されている。

横書きで数式も交えて説明しており、想定している主な読者は、おそらく理系教育を受けた人だと思われる。「……「むかし熱力学とか教わったけど、いまいち、わかんなかったな」というような漠然とした不満を抱えている読者向けに書いているつもり……」といった記述がある。

本書は、3つの章からなり、内容は以下のとおり。

マックスウェルの悪魔

第1章は、まず、ジェイムズ・クラーク・マックスウェルが『熱の理論』で提唱し、のちに「マックスウェルの悪魔」と呼ばれるようになった思考実験を紹介する。

この思考実験で、マックスウェルは、速い分子と遅い分子を見分けて選別できるような存在を考え、熱力学第二法則を揺るがす問題を投げかけた。本書では、分子をどのように選別するかなど、思考実験の内容を説明。

そして、この問題がどのように理解されていくのか、その「解決にいたる道筋を大まかに図示」している。

本書に書かれている道筋を全部引用すると長くなるので、このレビューでは一部分のみを示す。

マックスウェルが思考実験を提唱

「シラードのエンジン」

「ブリルアンの測定理論」

「ランダウアーの原理」

「ベネットによる最終解決」

これが通常の流れらしい。しかし本書が図示した道筋には、ここに、「ブラックホール」関連の話題が織り込まれている。

このような導入部から、「身近な熱現象」であるとしてパソコンに着目し、「パソコンと熱」の話題を「脱線」も交えて展開する。

その後で、エントロピーという概念について、熱力学の3つの法則について、「シラードのエンジン」について、というように解説されていく。これが、第1章の大まかな構成。

第2章は、おもに、エンジンの最大効率について。第3章は、ブラックホールの熱力学とブラックホールの統計力学について説明している。

ブラックホールのエントロピー

第3章では、放射についての解説から始めて、ブラックホールのエントロピーを計算する。

その計算の方法については、つぎのように述べている。

「厳密に高等数式をつかってやるのはホーキングの教科書や専門論文にまかせて、ここでは、初等数式だけをつかって、とりあえず、正解にたどりつくことを考える。」
「具体的には、べケンシュタインが最初に考えた方法に沿ってやってみる。」

そして、ステップ1〜4に分けて説明。(各ステップの最初には、そのコンセプトが示される)。

この解説は、本書の特色の一つと言えそうだ。

著者は説明が終わったあとで、こう記している。「これが、「べケンシュタイン―ホーキングのエントロピー」の式なのである。そんじょそこらの一般向け科学書にはでていない代物だ。……」と。

さらに、「ブラックホールのエントロピーは表面積に比例する」ことを説明していく。

このあと、ホーキング放射とブラックホールの蒸発について述べる。最後は、ブラックホールの統計力学の話題。

ブラックホールの統計力学のところでは、「ブラックホールのエントロピーもミクロの状態からもとめられるのか?」という疑問を投げかけ、これについて、「超ひも理論」に基づいて見ていく。

感想・ひとこと

文系を自認する人なら、熱力学の入門書的な本を読んだ後に手にしたほうがよさそう。

難易度の高いものを一般向けにやさしく紹介しようと試みているので、私はもしかすると、いつか、ふとこの本を思い出して部分的に再読するかも?

語り口は、独特。

初投稿日:2025年10月30日

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