重力で宇宙を見る ——重力波と重力レンズが明かす、宇宙はじまりの謎

書籍情報

【単行本】
No image
著 者:
二間瀬敏史
出版社:
河出書房新社
出版年:
2017年10月
定 価:
本体1,500円+税

全10章からなる本書では、第6章までで「重力波」の主な話題を、第7章以降で「重力レンズ」の主な話題を知ることができる。著者の研究の歴史も垣間見える一冊

2016年2月11日、重力波の初検出が発表された。「2015年9月14日、協定世界時9時50分、アメリカの重力波望遠鏡LIGOが、13億光年かなたの宇宙からやってきた重力波を検出した」という。GW150914と名づけられたこの重力波は、2つのブラックホールが衝突・合体した際に放出されたものだそうだ。

重力波が初めて「直接」検出されたのは上記のとおりだが、「間接的」にはすでに「発見」されていたという。ラッセル・ハルスとジョゼフ・テイラーは、「PSR 1913+16」という名前の連星パルサーを観測して、「重力波の放出によって」この連星パルサーの公転軌道が短くなっていることを見つけたそうだ。なぜ、その原因が「重力波の放出」だと考えられたのかというと、「観測結果が四重極公式の予言とぴたりと一致するから」だという。

この本では、四重極公式について、つぎのように簡単に説明している。

「アインシュタインは、物質が運動したときどれだけのエネルギーが重力波の放出によって失われるかを計算しました。この公式を「四重極公式」といいます。少し難しいので詳しい説明は省きますが、物体の四重極モーメントという、物体のでこぼこ具合を表す量が変化したときにどのくらい重力波が出て、それによってどれだけエネルギーが運ばれるかということを示す式です」

さて、ハルスとテイラーの「発見」の話に戻る。彼らの発表に対して議論が巻き起こったそうだ。「公式そのものが間違っているという論文や、この公式を導く方法がPSR 1913+16には適用できないと言いだす研究者が出てきた」という。

そして、「天体の運動から重力波が放出される様子を厳密に導くという研究が盛んになった」。この研究が、著者の博士論文のテーマだった(ウェールズ大学カーディフ校の博士課程)。他の研究者も同テーマに取り組んだ。それぞれ違った方法でおこなわれ、「1981年頃までには、どの方法でも四重極公式が正しいという結論」が得られたという。

博士課程修了後、著者は「マックス・プランク天体物理学研究所や、ワシントン大学の研究員として、主に一般相対性理論における運動や重力波に関する研究をして」いた。

1988年、著者は「弘前大学に職を得て、日本に戻る」。当時の著者は、重力波を直接検出できるとは考えていなかったそうだ。その後、「弘前大学から東北大学の天文学教室に移ったのをきっかけに、重力波研究から観測的宇宙論に研究の軸足を移す」。こう記している。「特に、当時の日本ではあまり注目されていなかった弱い重力レンズを用いた宇宙論の研究を、院生たちと始めました」と。

重力レンズには、「強い重力レンズ」と「弱い重力レンズ」があるらしい。それぞれ詳しく説明しているが、その一部を抜き出してみる。

その前に、この記述を紹介したい。「重力レンズ現象は、重力によって光の進行方向が曲げられることで生じます」

では、「強い重力レンズ」について。「……略……レンズ天体の重力によって、その後ろにある天体のイメージが2つあるいはそれ以上にみえる現象を「強い重力レンズ」といいます」

レンズ天体というのは、「レンズの役割をしている天体」のこと。たとえば、地球から望遠鏡でクェーサーの方向を見ているとする。地球とクェーサーの間に「楕円銀河」があるとする。この楕円銀河の重力によって、〝本当は1つであるクェーサー〟が2つの像に見えているとする。この場合、「クェーサーからの光を重力で曲げている天体」すなわち「楕円銀河」を「レンズ天体」という。

実際に、1979年に「双子のクェーサー」が発見された。調べてみると、その2つのクェーサーは、同じ天体だった。つまり、1つのクェーサーが2つに見えていた。これは、「強い重力レンズ」だ。この「初めての重力レンズ現象の発見」の例を、本書では図も交えて丁寧に紹介している。

さて、「マイクロレンズ(重力マイクロレンズ)」というのもある。「マイクロレンズは基本的には強い重力レンズ」とのこと。マイクロレンズとは、「恒星サイズの天体が引き起こす重力レンズ現象」のことをいうそうだ。

「弱い重力レンズ」とは、「銀河団の周辺部のような、重力が弱い領域が引き起こす重力レンズ」だという。もう少しだけ、「弱い重力レンズ」の説明を紹介してみたい。こう記している。「弱い重力レンズでは、重力が弱いために光の曲がりがごくわずかとなり、それによって背景の銀河の形がわずかにゆがむだけに過ぎません。……略……」

また、「宇宙の大規模構造による弱い重力レンズ現象」は「宇宙シア」と呼ばれるという。(本書では、宇宙の大規模構造の説明もしている)

では、重力レンズによって、どのようなことを明らかにしようとしているのか。「現代天文学における最大の謎」である、「ダークマター」(暗黒物質)と「ダークエネルギー」(暗黒エネルギー)の正体に迫ろうとしている。どのようにして迫るのか? それを本書の後半で解説している。ダークマターとは何か、ダークエネルギーとは何かの説明も交えながらの解説だ。

ひとこと

この本の第7章から第10章までを、〝「重力レンズ」の一般向けの入門書として〟おすすめしてみたい。暗黒物質と暗黒エネルギーの解説も含めて約70ページなので、たとえ難しいと思ったとしても、読み通すのが苦にならないのではないだろうか。

初投稿日:2018年05月26日

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