ニュートリノ ——もっとも身近で、もっとも謎の物質

書籍情報

【イースト新書Q】
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著 者:
多田将
出版社:
イースト・プレス
出版年:
2016年7月
定 価:
本体760円+税

素粒子物理学の基本から始めて、「ニュートリノ振動」の解説へ。基本的な内容から難解なところへと、少しずつ階段を登っていく。喩えを駆使した解説

著者らが行っているニュートリノ実験「T2K実験」は、2014年から、第2段階の実験を開始した。「それは、この宇宙に於ける、究極とも言える謎への挑戦なのです」と語る。

実験の第1段階については、こう記している。「T2K実験は、2010年1月から2013年5月までの期間の実験で、ミューニュートリノから電子ニュートリノへの変化という、それまで人類が誰も見たことがなかった現象を、世界で初めて発見するという快挙を成し遂げ、大成功のうちに実験の第1段階を終えた」と。

では、第2段階の実験の目標とはどのようなものか。それを伝えているのが、本書だ。

この本では、ほんの少しだが、「行列」が出てくる。それは〝写真的に見せた〟というような感じだ。最後のほうで、こう述べる。「どうでしょうか。先程の、クォークの混合を表わしたCKM行列と全く同じ形をしていますね。……略……各パラメーターの値は、クォークとニュートリノとで異なりますが、形は全く同じです。このことが、クォークとニュートリノとでそれぞれ世代間の混合を説明した、小林・益川理論とニュートリノ振動理論とが、対称になっている、ということを如実に顕わしています」

さらに、「究極の謎に挑む実験」と見出しを新たにして、つぎのように続ける。

「理論があるのであれば、それを証明する実験が必要です。このニュートリノに於けるCP対称性の破れを発見するための実験こそが、第4章の最後に述べた、T2K実験の第2段階の目標――最終目標なのです」

難解な言葉が登場するところを紹介したが、上記の記述は最後のほうに出てくる。本書は、「素粒子とは何なのか」というところから始めて、「ニュートリノとは何か」を述べ、反物質について丁寧に解説し、ニュートリノの検出方法、そして本書のハイライト「ニュートリノ振動」、CP対称性の破れ、というような流れで、基本的な内容から難解なところへと、少しずつ階段を登っていく。

ひとこと

喩えを駆使した解説。ユニークな喩えがあるので、その書き出しを紹介したい。

「……略(「Twitter」の話)……。ここでは、例として、猫の画像を貼り付けた場合について考えてみましょう」。「可愛い猫の画像を貼り付けたとき、猫好きのフォロワーや、逆に猫嫌いのフォロワーは、猫画像に反応することでしょう(図6)。一方で、猫に興味のないフォロワーは、スルーすることでしょう。猫好き(あるいは猫嫌い)といった特性を、ここでは、「猫荷」と呼んでみましょう。……略……」

「猫荷」は、「電荷」の喩え。この書き出しから、電磁波を「猫波」に喩えて解説している。この喩えは、6ページにわたる。そのうちの2ページがイラストの図。イラストを描いたのは、上路ナオ子。私は「猫荷」を持たないが、この喩えとイラストが面白かった。

また、「シュレディンガーの猫」という見出しのところにも、面白い喩えが登場する。ここでは、「化け猫」が出てくる。とてもユニークな喩えだ。

初投稿日:2017年05月15日

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