これが物理学だ!
著 者:
ウォルター・ルーウィン
出版社:
文藝春秋
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デカルトの誤り
著 者:
アントニオ・R・ダマシオ
出版社:
筑摩書房
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宇宙を創るダークマター
著 者:
キャサリン・フリース
出版社:
日本評論社
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意識と自己
著 者:
アントニオ・R・ダマシオ
出版社:
講談社
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物理学者のすごい思考法
著 者:
橋本幸士
出版社:
集英社インターナショナル
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量子革命
著 者:
マンジット・クマール
出版社:
新潮社
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エッジエフェクト 界面作用ーー福岡伸一対談集

書籍情報

【単行本】
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著 者:
福岡伸一
出版社:
朝日新聞出版
出版年:
2010年7月

福岡伸一の対談集

対談相手は、つぎの6人。桐野夏生、柄谷行人、森村泰昌、小泉今日子、鈴木光司、梅原猛。

桐野夏生との対談

桐野夏生の小説『女神記』の話から。「日本最古の歴史書である『古事記』を題材に描かれた」小説だそうだ。

桐野が「『女神記』を書こうと思ったのは、イザナキとイザナミの物語が、日本における呪いや恨みの始まりではないかとする本を読んで、この二神に興味を持ったから」だそうだ。「二神には恐ろしい破局が待っていた」という。桐野は、「原初的なイザナミの呪いや恨みを、自分のオリジナリティを絡めながら書いてみたいと思いました」と述べる。

また、桐野はつぎのように語る。「イザナキとイザナミのユニークな物語を、なるべく生のかたちで提示するように心がけました。二神の夫婦の物語から何かが呼び起こされるように」と。

福岡伸一は、「何か、とは?」と問う。桐野は、「男性原理とか女性原理と呼ばれるものでしょうか」と答える。

男のあり方、女のあり方、人間のあり方と関係性について、二人は語り合う。

福岡の語る、細胞の振る舞い方と人間の振る舞い方とのアナロジーを、桐野はおもしろがって、「それにしても生物学って面白そうですね。そんなふうに細胞のあり方というのは、人間のあり方とアナロジーできるものなのですか?」と問う。

また、桐野はこんなことを述べた。「私はこうやって小説家として物語を書いているように見えるのですが、実はそれは、私には世界がこういうふうに見えます、ということを社会に提示しているだけなのかもしれません」と。

福岡は、「桐野さんの、何かを提示しているだけという姿勢にはとてもシンパシーを感じるのです」と述べた。

柄谷行人との対談

因果性の問題、環境問題について語り合う。

柄谷行人は、「自由」について、こんな発言をする。「理論的次元では、「自由」はないのです。しかし、それは「自由」がないということではない。「自由」が成立するのは、因果性の次元をカッコに入れるときだけです」と。(この発言のまえに、カッコに入れる、ということについての話がある)

人間に「自由」があるかないかという話は、「スピノザおよびカントに関連する問題」だという。そして、こう述べている。

「スピノザは自由意志を認めなかった。(中略)スピノザに対しては、当然、反対があります。人間には自由な意志がある、という」。「ところが、カントはスピノザの考えとその反対の命題が、両方成立すると言うのです。その場合、彼は因果性が成立する次元を認めるとともに、それをカッコに入れた次元に自由を見いだします。言いかえれば、「自由」は、一定のレベルでのみ存在するわけです」と。

また、環境問題について語りあうなかで登場した言葉は、「未来の他者」

森村泰昌との対談

森村泰昌は、美術家になった経緯について、「社会的敗者として出発したような気がする」という。「みんなで何かをするという社会生活において、うまく立ち回れ」ずに、「空想の世界」に逃げたのだと。「ただ、そこで、空想の世界を丸ごと外へ投げ出す芸術というものに出会えたことが私にとって幸いでした」と語る。そして、こう続ける。

「福岡さんが著書にも書かれている「内側の内側は外側だ」というものの捉え方ができたことが幸いだったのです。芸術というのは、まさにそうなのです。内向的に、自分の内側へ向かってどんどん入り込んでいくと、そこに「リアリティ」が見つかる。芸術というリアリティを介して、外の世界へ出られる通路を見つけることができたのです」と。

二人が語り合うテーマは「美」について。

たとえば、判断基準について。現代では「真や善」が判断基準として用いられており、「美」という判断基準が通用しないという。「正しい」が勝ち、「美という物差し」を持たせてもらえない、と。

また、フェルメールの話もおもしろい。森村は、「「真珠の耳飾りの少女」は天体ではないかとひらめいたのです」と述べている。

そして、福岡伸一は、生命現象の美しさについてこう語った。「生命現象が美しいと思えるのは、そこに秩序があるからなのです。美は、秩序があるところに存在すると思っています」と。

小泉今日子との対談

福岡伸一が、著書『生物と無生物のあいだ』で語った生命観の話からはじまる。「生命とは、流れているもの」。久し振りに会えば、私たちは「分子レベルではお変わりありまくり」なのだと。

小泉今日子は、つぎのように語った。「以前、神さまって何なんだろうと考えたことがあったのですが、いろいろと考えた末に、自分のなかで納得できたのが、「神さまは分子なんじゃないか」という結論でした。そうすると、自分自身も神さまだし、世界や宇宙のすべてのものも神さまということになるのです」と。

生命のこと、エコのこと、仕事のこと、など、さまざまな話題が登場する。

たとえば、福岡は、「壊しながらつくる、壊しながらつくるを繰り返すことによって、生命は先へ進むことができているのです」と話す。それを聞いて小泉は、「私自身も、「小泉今日子」という人間を、少しずつ壊しながら、つくっていっているような気がします。そのためにも、自己模倣に陥らないように、いろいろな仕事に挑戦しているのだと思います」と話を展開する。ここからは、新聞の書評の仕事や、活字文化についての話となった。

鈴木光司との対談

夏はヨットで航海に出るという鈴木光司。そのため、彼をよく知っている編集者は、七月に大きな仕事は依頼してこないという。

鈴木は子どもの頃、ウミガメの卵を自分の手元で孵化させたい衝動にかられ、浜辺から十個の卵を周辺の砂と一緒に自宅へ持ち帰ったそうだ。ところが、卵は孵らなかった。全部、腐ってしまったのだという。とても後悔したその夜、「自然の営みの不思議さや、宇宙の成り立ちを知りたいと思い」、「それ以来、科学はぼくの大きな関心事のひとつになっている」と語る。

「子どもの頃から宇宙の成り立ちについて考えつづけてはいますが、未だに納得はできていません。宇宙はエントロピー増大の法則に支配されている。にもかかわらず、美しい天体の構造があり、生命が誕生したというのは、どうしても納得がいかないのです」と鈴木はいう。

そんな鈴木は、つぎのようなことを考えている。「イントロンとエキソンの問題と、全宇宙の物質とダークマター、ダークエネルギーの問題。そういうことを常に頭の片隅に置いておけば、いつか、うまくどこかでつながって、次の大作が生まれるかもしれません。十年後になるかもしれませんが(笑)」と。

また、福岡伸一は、科学少年だった鈴木がなぜ小説家になったのかと尋ねる。鈴木は「宮沢賢治が好きだった」そうだ。「ぼくも賢治を目指そうと」思ったという。

小説作法、ペルーにあるマチュピチュという遺跡のこと、現在の社会システムなどについて、二人は語り合っている。

梅原猛との対談

日本人の生命観や自然観について語り合う。「万物は流転する」、「草木国土悉皆成仏」、アイヌ語の「うつる」、エジプト文化と弥生文化、縄文人の世界観、などなど、さまざまな話題が登場する。

梅原猛は、「縄文文化こそ日本文化の源流だと考えるようになった」といい、また、「私たち日本人は今、縄文文化や弥生文化に通じるような世界観、和歌にもなり、能にもなり、俳句にもなった、太陽を中心とする自然崇拝の世界観へ帰らなければならないと思いますね」と語る。

福岡伸一も、「明治以降の近代主義というものにどっぷりと浸かってしまっている私たちは、ある種の解毒剤として、縄文をときどき思い出さなければいけませんね。縄文的なものは、日本人の古層の中にちゃんと残っているわけですから」という。

梅原は最後のほうで、こう述べた。「万物は移ろうもの、生命は生死を繰り返すもの。人間中心の世界観を自然中心の世界観へ、コペルニクス的転回を図らない限り、人類は滅びざるをえないのではないでしょうか」と。そして、「新しい哲学」をつくるという考えを表明した。

ひとこと

本書は、このレビューを書いている現在、入手困難となっている。

初投稿日:2016年03月30日

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