95%の宇宙ーー解明されていない“謎”を読み解く宇宙入門
書籍情報
- 著 者:
- 野村泰紀
- 出版社:
- SBクリエイティブ
- 出版年:
- 2025年6月
宇宙と物理学(素粒子、量子力学、時間、量子重力)の一般向け〝「超」入門書〟
宇宙と物理学(素粒子、量子力学、時間、量子重力)に関する謎にフォーカスしながら、これらの基礎的な知識を紹介する。一つ一つの内容には深入りせず、定番的な話題を幅広く取り上げている。
まず、「謎」を3つに分類することから始めている。
タイプAは、「既存の理論や法則によって説明可能でも、それが人間の直感に合っていないため、謎めいて見えるもの」。これは、「謎」というより、「不思議」といったほうが適切なもの。
タイプBは、「理論的には説明可能だが、観測や実験での検証がなされていない、もしくは不十分なため、実際に何が起きているかはまだわからないという意味の謎」。
タイプCは、「現時点では、それを説明する理論を構築することすら困難だという種類の謎」。
(タイプBとCの境目は、はっきりしたものではないとのこと)
このような3つの分類をはじめに示して、各話題がどのタイプの謎なのかといった解説も加えている。
宇宙の95%は正体不明
宇宙を構成するエネルギー量で見たとき、現在わかっているのは宇宙の5%のみ。残りの95%はまだ謎に包まれている。その未知なるものは、約27%がダークマター(暗黒物質)、約68%がダークエネルギー(暗黒エネルギー)だという。名前はつけられているが、その正体は現時点では明らかになっていない。
しかし、ダークマターやダークエネルギーの存在は、ほぼ疑いようがないと述べており、その存在がどのようにして浮かび上がってきたか、その正体はどのようなものだと考えられているか、といったことを解説している。
どんな話題に触れられるか(各章をごく簡単に紹介)
序章では、ニュートンの万有引力の法則、アインシュタインの特殊相対性理論と一般相対性理論などを取り上げる。
第1章では、宇宙論の主要な話題を見ていく。宇宙の膨張、ビッグバン理論、「ビッグバンのなごり」と表現される宇宙マイクロ波背景放射について。宇宙の地平線問題と平坦性問題、それらを解決するインフレーション理論。ダークマターとダークエネルギーについて、など。
第2章は、素粒子にまつわる解説。素粒子の標準模型、「バリオン数生成の謎ーー粒子と反粒子の量の非対称性の謎ーー」、ニュートリノの謎、など。
第3章では、量子力学が構築されていく歴史を概観して、二重スリット実験、コペンハーゲン解釈、多世界解釈などを説明。
第4章では、時間の謎について議論する。エントロピー増大の法則などの話題が登場。
第5章では、超弦理論(超ひも理論)、マルチバース理論、ブラックホールにまつわる話題(「ブラックホールの情報喪失問題」など)を取り上げる。
感想・ひとこと
宇宙論、相対性理論、量子力学、素粒子物理学、超弦理論などの一般書を読んだことがない方に向けた〝「超」入門書〟。この分野の一般向けの定番的な話題を広く見渡すことができる。多様な話題を盛り込んでおり、その一つ一つの内容には深入りしない解説なので、その意味で、(入門書ではなく)〝「超」入門書〟という見出しをつけた。