これが物理学だ!
著 者:
ウォルター・ルーウィン
出版社:
文藝春秋
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デカルトの誤り
著 者:
アントニオ・R・ダマシオ
出版社:
筑摩書房
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宇宙を創るダークマター
著 者:
キャサリン・フリース
出版社:
日本評論社
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意識と自己
著 者:
アントニオ・R・ダマシオ
出版社:
講談社
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物理学者のすごい思考法
著 者:
橋本幸士
出版社:
集英社インターナショナル
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量子革命
著 者:
マンジット・クマール
出版社:
新潮社
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ブラックホールを飼いならす!ーーブラックホール天文学応用編

書籍情報

【EINSTEIN SERIES】
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著 者:
福江純
出版社:
恒星社厚生閣
出版年:
2006年6月

「宇宙アクリーション天体」とは何かから説き起こし、降着円盤、宇宙ジェット、カー・ブラックホール、ワームホールなどを解説

本書は、『ブラックホールは怖くない?』(基礎編)と同様の体裁で、「本文」「数式コーナー」「COLUMN」からなる。本文は言葉による解説で、コラム的に数式コーナーがあるので、数式コーナーは読み飛ばすこともできる。

著者は「あとがき」で、基礎編とのつながりは深いものの「応用編に相当する本書だけでも読めるように配慮してある」と記している。でも読むなら、基礎編から読んだほうが楽しめるのではないか、という印象を私はもった。

楽しめると書いたが、読書を気楽に楽しむタイプの本ではなく、学びを楽しむというか、知りたいという好奇心を満たしてくれるというか、そういうタイプの本だ。

著者・福江純の専門は、「相対論的宇宙流体力学、とくにブラックホール降着円盤と宇宙ジェット現象」(著者紹介より)なので、やはり本書の読みどころは、「降着円盤」と「宇宙ジェット現象」を解説している章、「CHAPTER2 宇宙アクリーション天体」「CHAPTER3 宇宙ジェット天体」だろう。(ちなみに、「相対論的宇宙流体力学」という言葉でこの本を手に取るのをやめる必要はない)

宇宙アクリーション天体については、つぎのように説明している。

「「宇宙アクリーション天体」とは、ブラックホールなど重力を及ぼす天体にガスが落下降着(アクリーション)している天体のことだ。星が核融合反応のエネルギーによって光っているのに対し、宇宙アクリーション天体は、降着するガスが重力エネルギーを解放し光輝いている……略……」

では、具体的にはどんな天体なのか。もう少し引用を続けたい。

「宇宙アクリーション天体としては、星間ガス雲の中で誕生したばかりの天体でまだまわりから星間ガスの落下が続いている「原始星」、ブラックホール(や中性子星など)とふつうの星の連星系でブラックホールが相手の星からガスを吸い込んでいる「X線星」、そして中心に超巨大ブラックホールを抱え込んだ「活動銀河」や宇宙の彼方の「クェーサー」などが知られている。これらのさまざまな活動的天体現象では、ブラックホールなど中心天体のまわりをめぐる降着円盤が非常に重要な役割を果たしている。」

このような説明から、「活動銀河」「近接連星型X線星」「原始惑星系円盤」を説明していく。そして、「球対称アクリーション」と「円盤状アクリーション」を解説するというのが「CHAPTER2」の大まかな流れ。「ボンヂ降着」「エディントン光度」「輻射捕捉」「フォトンバブル」などの言葉が登場している。

「輻射捕捉」「フォトンバブル」の説明を、ちょっと紹介してみる。

「……略……ブラックホールなどの周辺でも、落下してきたガスの密度が非常に高くなって、ガスが光子に対して不透明になることがある。とくにブラックホール周辺のような相対論的極限領域では、光子がガスに捕らわれてしまう「輻射捕捉」と呼ばれる現象や、プラズマガスの内部に光子に満ちた泡領域が生じる「フォトンバブル」と呼ばれる現象など、変わったことが起きるのだ。」

また、降着円盤については、「標準降着円盤」と「超円盤」を解説している。

「CHAPTER7 ブラックホールとワームホール」の内容にもちょっと触れたい。ここでは、「クルスカル図」や「ペンローズ図」などを一般向けに丁寧に説明して、これらの図で、ブラックホール、ホワイトホール、ワームホールを説明している。説明の後で、著者はこう述べている。「ブラックホールとホワイトホールとワームホールは、しばしば混同されやすい存在だが、以上のように、クルスカル図やペンローズ図で見ると、それぞれ異なったものであることがよくわかる」

他には、ブラックホールの誕生、成長過程、蒸発について、重力レンズについて、カー・ブラックホールについて、などの話題がある。

(引用の際に、「,」は「、」に、「.」は「。」に変更した)

ひとこと

著者は「はじめに」で、「ブラックホールについて学ぼうと思っても、オハナシだけの啓蒙書と数式だらけの専門書の両極端にわかれていて、帯に短し襷に長し、というのが現状である」と述べている。本書(と「基礎編」)は、この溝を埋める一冊と言えるのかもしれない(?)

〝かもしれない(?)〟と曖昧な書き方をしたのは、私が「数式コーナー」を読み飛ばしたから。数式コーナーを読み飛ばすと、ハードな一般書という感じ。

初投稿日:2019年01月25日

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