免疫の守護者 制御性T細胞とはなにか
著 者:
坂口志文/塚﨑朝子
出版社:
講談社
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新しい免疫入門
著 者:
審良静男/黒崎知博
出版社:
講談社
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幸福感に関する生物学的随想
著 者:
本庶佑
出版社:
祥伝社
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免疫の意味論
著 者:
多田富雄
出版社:
青土社
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遺伝子が語る免疫学夜話
著 者:
橋本求
出版社:
晶文社
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美しき免疫の力
著 者:
ダニエル・M・デイヴィス
出版社:
NHK出版
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新装版 マックスウェルの悪魔ーー確率から物理学へ

書籍情報

【ブルーバックス】
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著 者:
都筑卓司
出版社:
講談社
出版年:
2002年9月

エントロピーと熱力学の第二法則を統計力学的に解説

「マックスウェルの悪魔は、物理学ではよく知られたパラドックスの一つである」。本書では、これを切り口として、エントロピーと熱力学の第二法則を中心に、熱力学・統計力学について述べている。著者・都筑卓司の専門は統計力学であり、おもに統計力学的に解説している。

著者は、以下のように記している。

「自然科学に統計力学という、自然の本質への一つの代表的なアプローチの仕方があるが、その基本的な考え方を、この悪魔を介して時に逆説的にながめてみようとするのが本書の骨子である。」

また、「記述はできるだけかみくだき、初めての人にも不明の点のないよう心がけたつもりである。」とも述べている。

プロローグは、「マックスウェルの悪魔」をテーマにした物語。

冒頭、酒と水を混ぜてしまって泣いている「坊や」のもとに「小人」が現れる。小人は、酒と水を分けて、坊やを助けてあげる。そんなシーンから始まり、人間社会の中で使われるようになる小人たちを描いていき、小人たちができることを浮き彫りにしていく。そして、「長い長い」年月が経ち、人間と小人は喧嘩別れして……という流れから、小人が消えた後の人類を描き、宇宙の熱的終焉の可能性について述べていく。

また、本書の終わりでは、「エントロピーは増大する」という物理法則に照らして、人間社会を考察している。

積み重ねるように解説していき、徐々に、熱力学の第二法則とはどのようなものか、エントロピーとは何かを明らかにする

まず、エネルギー保存則について、次に、ものは「まざる」という現象について述べる。

これらは、「まるで関係のない二題話のように思われるかもしれない」。「しかし……いささか極端ないい方をすれば、自然界の現象は、この二つの法則を軸として進行していると考えてもいい」という。

熱力学の第一法則は、エネルギー保存則。

熱力学の第二法則は、まず、こう説明している。「分離の状態は、やがては混合という結果に追い込まれることを述べたものが熱力学の第二法則である」と。

もし、この世に、第一法則(エネルギー保存則)しかなかったら、例えば、地面の石が、付近の熱を集めて、ひとりでにとび上がってもいいはずだという。これは、ざっくり書くと、次のような感じで説明されている。

石が、10メートルの屋根から落ちて、地面をわずかに転がって止まる。このとき、「地面と石とが多少熱くなったはずである」。発生する熱量はわずかで、熱はすぐに散ってしまう。とはいえ、石の位置エネルギーが熱エネルギーに変わったことに間違いはない。では、その地面の石が付近の熱を集めて10メートルとび上がることはないのか。このようにして石がとびあがっても、エネルギー保存則には矛盾しない。

しかし、こんなことは現実には起こらない。

第一法則(エネルギー保存則)だけでは実際の現象を説明するのに不十分だということになる。第二法則が必要になってくる。このようなことを述べて、次の小見出しとなる。

「石がひとりでにとび上がらないことがなぜ第二法則か」

この小見出しは、以下のように始まる。

「熱力学の第二法則とは、分子がよく混合することであった。石や自動車がとび上がらないことと、ものがまざることと、どう関係があるのか?」

こう問いかけて、「熱あるいはものの温度が高い」とはどういうことか、さらに、「エネルギーの良否」について説明していく。

このような感じで、積み重ねるように解説していき、徐々に、熱力学の第二法則とはどのようなものか、エントロピーとは何かを明らかにしていく。

エネルギー、エントロピー、温度の関係について丁寧に解説

合金の「相変化」について、そして真鍮における「銅原子と亜鉛原子の並び方」について丁寧に説明していき、以下のように記す。

「(略)自然界の物体は位置エネルギーを減らそうとしている。銅原子と亜鉛原子とは強く引き合う。だからたがい違いに並びたい。」

「また、それとは別に、確率論的には完全に交互に並ぶということは、非常にまれなことである。この意味では、銅と亜鉛とは全く不規則にバラまかれた状態になりたい。」

このような「矛盾をはらんでいる」ことを説明。結局どうなるかというと、「妥協」して、「ほどほどに規則正しく、ほどほどに乱雑になるのである」という。そして、この「ほどほど」の程度は、「温度によって決まる」ことが説明されていく。

さらに、同じような「妥協の問題」については、「空気の分子がなぜ雪のように、降って地上につもらないのか?」という例で詳述される。

このような具体的な例を用いた丁寧な解説が積み重ねられていき、その後、さまざまな話題を経て、「自由エネルギー」の式にたどり着く。そこでは、次のように記されている。

「(略)物理体系は、この式を最も小さくしようとしているものである……ということがわかったのである。」

感想・ひとこと

本書(新装版)は2002年出版だが、初版は1970年。すなわち、50年以上読まれ続けているロングセラーということになる。2025年11月現在、新装版はAmazonで新品が購入できる。このような時の洗礼に耐え、内容的にも丁寧に丁寧に解説されている本は、名著と呼びたい。

とくに、エネルギー、エントロピー、温度の関係について、読者が理解しやすいような構成で丁寧に解説しているところに好印象をもった。

一般向けに、〝エントロピーと熱力学の第二法則を統計力学的に解説している本〟を探している文系読者におすすめしたい。

初投稿日:2025年11月28日

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