これが物理学だ!
著 者:
ウォルター・ルーウィン
出版社:
文藝春秋
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デカルトの誤り
著 者:
アントニオ・R・ダマシオ
出版社:
筑摩書房
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宇宙を創るダークマター
著 者:
キャサリン・フリース
出版社:
日本評論社
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意識と自己
著 者:
アントニオ・R・ダマシオ
出版社:
講談社
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物理学者のすごい思考法
著 者:
橋本幸士
出版社:
集英社インターナショナル
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量子革命
著 者:
マンジット・クマール
出版社:
新潮社
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ミラーニューロンを知る

「ミラーニューロンを知る」メイン画像

まるで鏡のように他者を映し出す神経細胞。そんな興味深いミラーニューロンを知るための三冊をピックアップ。下記記載の三冊を読んで私が感じた「ミラーニューロン」の興味深い点をざっくりとまとめてこの読書テーマのご案内としたい。

ミラーニューロンの発見は、「生物学におけるDNAの発見」に相当するともいわれている

著名な神経学者であるV.S.ラマチャンドランは、「DNAが生物学の分野に果たしたのと同様の役割を、ミラーニューロンは心理学の分野で果たすだろう」と表現した。(『ミラーニューロンの発見』(マルコ・イアコボーニ著)の訳者あとがきを参照)

他者の意図を理解する、共感する、といった私たちの能力をささえている神経細胞

ミラーニューロンは自分が行動するときに活性化するだけでなく、他者が同様の行動をするのを「見ている」ときにも活性化する。この活動は、脳内で自分の身体イメージを用いて、他者の行為をシミュレーションしているようなもの。この働きは、他者の意図を理解する、共感するといったことを可能にしていると考えられている。

「模倣」の中核を担っているミラーニューロン

アンドルー・メルツォフの研究によれば、赤ん坊はごく簡単な手ぶりや顔の表情などを模倣するそうだ。この研究から、赤ん坊は「模倣によって学習する」という主張がなされている。また、模倣は文化の伝達を根本的に支えていると言われている。この模倣の中核をミラーニューロンが担っているようだ。自閉症児にみられる模倣障害に着目して、自閉症のミラーニューロン機能不全説なども唱えられている。

言語の起源にもかかわっているという可能性

ミラーニューロンは、はじめマカク属のサルのF5野でみつかった。ヒトにおいて、サルのF5野の相同部位とされているのがブローカ野。ここは言語表出(発話)の中枢として知られているが、口−顔面、腕−手、口−喉頭部の動きの間に活性化するという運動特性を持っている。手ぶりと身ぶりに言語の起源があるというのは古くから言われてきたこと。ブローカ野は模倣にとっても重要な領域とされる。そしてミラーニューロン系は、行為の理解と行為の生成をつなぐ。これらの点を総合して、言語の起源におけるミラーニューロンの重要性が説かれている。

「自己認識」とミラーニューロンについて

『脳のなかの天使』(V.S.ラマチャンドラン)では、自己認識の誕生をこう推察している。ミラーニューロン・システムは、世界を「他者の視点」から見ることを可能にし、「人間の場合はそのシステムが内側に向かい、自分自身の心を表象することを可能にしたのではないか」と。他者認識と自己認識は共進化したという見解が示される。

『ミラーニューロンの発見』(マルコ・イアコボーニ)では、こう述べられている。「「他人の」観点から見た自分ではなしに、どうやって「自分」のことを考えられるだろう? 自分がいなければ他人を定義したところでほとんど意味はなく、他人がいなければ自分を定義したところでたいして意味がない。そうであるなら、そこにミラーニューロンが関わっていないわけがない。ミラーニューロンとは、この自己と他者との不可避な関係、必然的な相互依存性を(その発火パターンによって)具体的に表しているような脳細胞なのである」と。

さまざまなタイプのミラーニューロンがある!?

ミラーニューロンを発見したのは、ジャコモ・リゾラッティ率いるパルマ大学の研究チーム。自分が行動するときに活性化する「運動ニューロン」が、他者が同様の行動をするのを「見ている」ときにも活性化することがわかった。このような視覚特性をもつ「運動ニューロン」は、ミラーニューロンと名づけられた。これが一般的に言われているミラーニューロンである。

ところが、トロント大学の研究者たちは、前部帯状回の「痛覚ニューロン」が、自分の痛みに反応するだけではなく、他人に同様の痛みが与えられているのを「見ているとき」にも反応することを発見した。こちらは「行動」ではなく、「痛み」に反応する。脳内には、類似のミラーメカニズムが他にもある。ラマチャンドランは、それぞれのタイプを、「運動ミラーニューロン」、「感覚ミラーニューロン」と表現している。

ミラーニューロンを知る書籍

『ミラーニューロンの発見』

ミラーニューロン発見の話題から哲学的な話題まで、さまざまな角度からミラーニューロンを考察する。読み物としてのおもしろさがある。たくさんの脳撮像実験をもとに、著者の仮説がたっぷりと披露されている。

【ハヤカワ文庫NF】
ミラーニューロンの発見
著 者:
マルコ・イアコボーニ
出版社:
早川書房
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『脳のなかの天使』

ミラーニューロンを知るうえで、やはりその重要性を強調しているラマチャンドランの本は読んでおきたいところ。本書はミラーニューロン以外の脳の話題もある。読み物として抜群におもしろい。

【単行本】
脳のなかの天使
著 者:
V.S.ラマチャンドラン
出版社:
角川書店
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『ミラーニューロン』

ミラーニューロンの発見者として知られるジャコモ・リゾラッティが著者のひとり。本書は一般向けだが、解剖学的・機能的記述を交えて解説されている。読み物として気軽に楽しめる本ではないが、そのぶんとてもためになる。三冊のなかでもっとも慎重な姿勢でミラーニューロンを解説している。

【単行本(新装版)】
ミラーニューロン
著 者:
ジャコモ・リゾラッティ/コラド・シニガリア
出版社:
紀伊國屋書店
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初投稿日:2014年09月24日

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