これが物理学だ!
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ウォルター・ルーウィン
出版社:
文藝春秋
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デカルトの誤り
著 者:
アントニオ・R・ダマシオ
出版社:
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意識と自己
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アントニオ・R・ダマシオ
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物理学者のすごい思考法
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橋本幸士
出版社:
集英社インターナショナル
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量子革命
著 者:
マンジット・クマール
出版社:
新潮社
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星が「死ぬ」とはどういうことかーーよくわかる超新星爆発

書籍情報

【Beret science】
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著 者:
田中雅臣
出版社:
ベレ出版
出版年:
2015年7月

第Ⅰ部では、超新星爆発のスケールを語り、超新星爆発の研究の歴史を辿る

宇宙では実際に星が爆発しているという。星の「死」であるこの爆発は、「超新星爆発」と呼ばれている。超新星爆発は、「超新星」とも呼ばれる。超新星爆発はとてつもなく明るい。そのため、星の「死」であるこの爆発は、地球上では「新しい星」が突如現れたように見える。その「新星」が極端に明るいために「超」がついて、超新星と呼ばれることになった。

超新星爆発=超新星ということだが、「主に、星の爆発という物理現象を指す場合は超新星爆発といい、観測されている天体を指す場合は単に超新星というのが一般的」だそうだ。そして繰り返せば、超新星爆発(超新星)とは星の「死」だ。

本書では、まず、超新星爆発のスケールを掛け算や割り算といった簡単な計算を交えて紹介し、また、現在では年間500個以上の超新星爆発が発見されていることなどを伝える。読者に「宇宙で本当に星が爆発していることを実感」させることから始めている。

つぎに、超新星の歴史的な記録を見ていく。藤原定家が記した『明月記』には、超新星のことが書かれている。本書にはその箇所の図版も収録されており、それを見ると、最初に「客星古現例」と記されている。

「客星」(かくせい)とは「今までいなかったけれど、突如現れて、その後またいなくなった星のこと」で、客星には超新星だけでなく彗星も含まれていることがわかっているという。この部分には8つの客星の記録があり、そのうちの3つ(1006年の客星、1054年の客星、1181年の客星)が、超新星だそうだ。「1054年の客星」は、超新星爆発の研究において重要な役割を果たした。本書では、さらに1054年の客星について述べていく。

ほかに、「1572年に発見され、デンマークの天文学者ティコ・ブラーエが詳細に観測した」ティコの超新星を紹介している。この星のことを、ティコは「Stella Nova(ステラ ノヴァ、「新しい星」の意)」と呼んだ。

つぎに、「1920年代~1940年代にかけて、「超新星」という天体の存在が天文学においてじわじわと確固たるものとなっていった過程」を紹介する。たとえば、「1054年の客星」と「かに星雲」とが同一天体であることがわかるまでの過程、また、ウォルター・バーデとフリッツ・ツビッキーが「新星」は大きく2種類に分けられることを初めて示したこと、などが述べられる。

第Ⅱ部では「超新星爆発のメカニズムに迫る」

宇宙では星が爆発しているが、すべての星が爆発するわけではない。私たちの最も身近な星である太陽は、その最期に超新星爆発を起こさない。第Ⅱ部では、まず太陽の一生から説き起し、星の「進化」の概要を述べていく。

そして、星がなぜ爆発するのかを論じる。超新星爆発のメカニズムは現時点ではまだ完全に解明されていないそうで、そのことについても触れている。

超新星は、いくつかのタイプに分類される。「超新星が放つ光を「分光」することで、そこに含まれる元素を知ることができ、水素をもたない超新星をⅠ型、水素をもつ超新星をⅡ型、と呼ぶ」

Ⅰ型は、さらにつぎのように分類されるという。ケイ素をもつものともたないものに分類でき、ケイ素をもつものを「Ⅰa型」という。ケイ素をもたないものは、ヘリウムをもつものともたないものに分類される。Ⅰb型(ヘリウムをもつ)、Ⅰc型(ヘリウムをもたない)

並べて整理すると(本書では、図で整理)
Ⅰ型は「水素なし」
「Ⅰa型」(水素なし、ケイ素あり)
「Ⅰb型」(水素なし、ケイ素なし、ヘリウムあり)
「Ⅰc型」(水素なし、ケイ素なし、ヘリウムなし)
Ⅱ型は「水素あり」

超新星のタイプによって、明るさとその明るさの変化は異なる。なぜ、このようなさまざまなタイプの超新星が存在するのか、なぜ超新星はとてつもなく明るく輝くのかを説明する。

第Ⅱ部の最後で「元素の起源」について述べる。

第Ⅲ部では「超新星爆発研究の最前線」を伝える

ここでは、おもに、「ガンマ線バースト」について、「金や銀、プラチナなどの鉄より重い元素の起源」について紹介している。

ガンマ線バーストには、継続時間の長いものと短いものがあり、それぞれ「ロングガンマ線バースト」、「ショートガンマ線バースト」と呼ばれている。

「ガンマ線バーストの歴史」から説き起し、ロングガンマ線バーストと超新星爆発の関連が決定的となっていく過程を描いている。

ロングガンマ線バーストに付随する超新星は、「普通の超新星よりも規模が10倍も大きい爆発」だそうで、このような超新星は「極超新星」(ハイパーノバ)と呼ばれている。さらに解説は続く。ブラックホールとガス円盤とジェットについて簡単に説明し、まだ謎に包まれているロングガンマ線バーストのメカニズムに迫っていく。著者は、現時点での理解をつぎのように述べている。

「回転している重い星が一生の最期に重力崩壊すると、星の中心にブラックホールと円盤ができ、そこから光の速度に近いジェットが放出された結果がロングガンマ線バーストであると考えられている」。(この章までに、重い星の一生については説明されている)

「ショートガンマ線バースト」は、中性子星同士の合体によるものと現在のところ考えられている。しかし、これはまだ確定したわけではないという。また著者は、「ロングガンマ線バーストには極超新星が付随するように、ショートガンマ線バーストには「超速新星」が付随するはず」と述べている。

この話題を紹介している章の見出しは、『金をつくる「超速新星」?』。じつは、この現象は最近登場したためにまだ正式名称がないそうだ。いくつかの呼び名があり、本書では「超速新星」と呼んでいる。

「中性子星の合体が金や銀、プラチナなどの元素の合成現場なのかもしれない可能性が急速に注目を集めて」いるそうだ。

この章には、著者らの研究も登場。「この章に書かれることは天文学の常識、すなわち「わかったこと」ではありません。ですので、10年後の教科書にはまったく違うことが書いてあるかもしれません」と記している。まさに天文学研究の最前線を紹介している。

ひとこと

著者は「前提知識は何も必要ありません」と述べており、「超新星爆発(超新星)」の入門書的な一冊と言える。入門書的ではあるが、一般書としては読み応えのある部類に入る本だと思う。

初投稿日:2018年11月15日

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