免疫の守護者 制御性T細胞とはなにか
著 者:
坂口志文/塚﨑朝子
出版社:
講談社
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新しい免疫入門
著 者:
審良静男/黒崎知博
出版社:
講談社
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幸福感に関する生物学的随想
著 者:
本庶佑
出版社:
祥伝社
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免疫の意味論
著 者:
多田富雄
出版社:
青土社
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遺伝子が語る免疫学夜話
著 者:
橋本求
出版社:
晶文社
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美しき免疫の力
著 者:
ダニエル・M・デイヴィス
出版社:
NHK出版
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熱力学の本、どれを読む? 宇宙の終わり、生命、時間の矢

「熱力学の本、どれを読む? 宇宙の終わり、生命、時間の矢」メイン画像

熱力学の本には壮大なタイトルがついていることがある。たとえば、私がおすすめしている『宇宙を解く唯一の科学 熱力学』はその一つだ。

なぜ、このような一見して誇大とも感じられる表現がなされるかというと、宇宙の終わりを考察するうえで、熱力学第二法則が重要な知見の一つだから。

熱力学第二法則は、「エントロピー増大の法則」とも呼ばれている。

エントロピー増大の法則を見聞きするのは、宇宙の話題だけではない。生命を考察する際にも、しばしば熱力学第二法則が議論にのぼる。

さらに、「時間の矢」という少々哲学的な論考においても、熱力学第二法則が取り上げられることになる。時間の矢とは何だろうか。

宇宙、生命、時間。

これらは、有限の時を生きる私たちがもっとも好奇心を掻き立てられるテーマではないだろうか。その考察において、熱力学第二法則は登場する。

熱力学といえば、蒸気機関の話題を思い浮かべる人もいるかもしれないが、話はそれにとどまらない。

エネルギー、エントロピー、温度といった熱力学の本で説明される概念に、少し腰を据えて向き合えば、宇宙、生命、時間といった、興味をそそる話題に接する際に役立つ知見に触れることができる。それが、この読書テーマの魅力だと私は思っている。

以下に、熱力学をテーマに読書した際に私がセレクトした、熱力学・統計力学の一般向け書籍を紹介していく。

文系の方なら、熱力学と統計力学がなぜ同じ本の中で語られるのかと、いま思っているかもしれない。そんな疑問にも、各書籍が回答してくれる。

熱力学・統計力学に関する知識を得られる一般書

数多の科学者たちの人物像と研究を丹念に描き、熱力学・統計力学の歴史をたどる『宇宙を解く唯一の科学 熱力学』

本書は3部構成で、蒸気機関から説き起こし、情報・通信、ブラックホールの熱力学まで、多彩な話題を取り上げている。第Ⅰ部と第Ⅱ部で、熱力学・統計力学の主な歴史について知ることができる。読み物としておもしろいので、とくに科学者たちの物語に興味がある方におすすめしたい。

著者紹介をみると、ポール・センは「ドキュメンタリー作家」。「ケンブリッジ大学で工学を学んでいたときに熱力学と初めて出合う」と記されている。たしかな知識とドキュメンタリー作家としての描写力が掛け合わされて、すぐれた科学読み物が生み出されたのだ、と思う。

熱力学の歴史に興味がある方におすすめの本というレビューも書いて本書を紹介している。

【単行本】
宇宙を解く唯一の科学 熱力学
著 者:
ポール・セン
出版社:
河出書房新社
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さまざまな「モデル」を用いて「本質」を浮き彫りにしながら、熱力学第二法則を解説。生命の話題にまで広がっていく『エントロピーと秩序 熱力学第二法則への招待』

本書は、1992年に日経サイエンス社より刊行された名著として知られる一冊が文庫化されたもの。名著という評価に納得できる、読み応えのある本。著者紹介によると、ピーター・W・アトキンスは「定評ある教科書の執筆者として知られ」ている。

特徴のひとつは、さまざまな「モデル」を用いて解説しているところ。もうひとつの特徴は、「開放系」の熱力学を取り上げ、散逸構造を説明しているところ。私たちは散逸構造だという。生命の話題にまで広がっていくところが、おもしろい。

熱力学第二法則に興味をもった方におすすめの本というレビューも書いて本書を紹介している。

【ちくま学芸文庫】
エントロピーと秩序
著 者:
ピーター・W・アトキンス
出版社:
筑摩書房
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エントロピーと熱力学の第二法則を統計力学的に解説した名著『新装版 マックスウェルの悪魔 確率から物理学へ』

本書(新装版)は2002年出版だが、初版は1970年。すなわち、50年以上読まれ続けているロングセラー。

「マックスウェルの悪魔」を切り口として、エントロピーと熱力学の第二法則を中心に、熱力学・統計力学について述べている。著者・都筑卓司の専門は統計力学であり、おもに統計力学的に解説。

エネルギー、エントロピー、温度の関係について、読者が理解しやすいような構成で丁寧に説明している。

〝エントロピーと熱力学の第二法則を統計力学的に解説した一般書〟をお探しの方におすすめの本というレビューも書いて本書を紹介している。

【ブルーバックス】
新装版 マックスウェルの悪魔
著 者:
都筑卓司
出版社:
講談社
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熱力学第二法則を中心テーマとして、熱力学・統計力学からブラックホールの熱力学・統計力学まで広く取り上げる『熱とはなんだろう 温度・エントロピー・ブラックホール……』

著者の竹内薫は、「物理学の大学院をでている」有名なサイエンス作家。本書の特徴は、ブラックホールの熱力学・統計力学の話題に多くの紙面を割いているところ(およそ3分の1)。ブラックホールのエントロピーを取り上げている。

また、コラム形式の解説(設定した登場人物たちの会話による解説)が挿入されている。語り口は、独特。

難易度の高いものを一般向けにやさしく紹介しようと試みている。

【ブルーバックス】
熱とはなんだろう
著 者:
竹内薫
出版社:
講談社
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科学者の物語を織り込みながら、エントロピーを軸に熱力学・統計力学の知識を紹介する『エントロピーをめぐる冒険 初心者のための統計熱力学』

本書には、熱力学、統計力学の発展に寄与した数多の科学者たちが登場する。その中からつぎの3名、サディ・カルノー、ルートヴィヒ・ボルツマン、ジョサイア・ウィラード・ギブズにフォーカスして、その物語を丹念に描き出している。

まず科学者の物語を読み、そのあと熱力学や統計力学の知識を学ぶ、これが交互に繰り返されるような構成になっている。

著者の鈴木炎は、本書出版時点では「富山大学理学部化学科准教授」で、「理学部化学科の学生を対象とした化学熱力学、並びに経済学部の学生を対象とした一般化学の講義を担当している」(本書の著者紹介より)とのこと。

ほどよいボリュームで、科学史的な記述と物理の解説のバランスがよい。おもな読者に想定しているのは「理系の高校生」。

【ブルーバックス】
エントロピーをめぐる冒険
著 者:
鈴木炎
出版社:
講談社
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熱力学の本、どれを読む?

現時点(2026年2月まで)で、私がセレクトしたのは、上記5冊。

科学者の物語が好きな文系読者には、『宇宙を解く唯一の科学 熱力学』をおすすめ。熱力学の歴史に興味がある方におすすめの本というレビューも参考にしてほしい。

理系の一般読者なら、『エントロピーをめぐる冒険 初心者のための統計熱力学』を入門書とするのが良いかも。文系向けの入門書という印象を私はもたなかったが、科学史的な記述と物理の解説のバランスが良いので、入門書的な構成と内容だと思う。

『新装版 マックスウェルの悪魔 確率から物理学へ』『エントロピーと秩序 熱力学第二法則への招待』は名著として知られている。この分野に本当に興味をもったら、どちらも読んでおきたい。

ブラックホールのエントロピーに興味がある方なら、『熱とはなんだろう 温度・エントロピー・ブラックホール……』を手に取ってみる価値がある。

ちなみに、私が読んだ順番は、

『エントロピーをめぐる冒険 初心者のための統計熱力学』(鈴木炎/ブルーバックス)

『熱とはなんだろう 温度・エントロピー・ブラックホール……』(竹内薫/ブルーバックス)

『新装版 マックスウェルの悪魔 確率から物理学へ』(都筑卓司/ブルーバックス)

『エントロピーと秩序 熱力学第二法則への招待』(ピーター・W・アトキンス/ちくま学芸文庫)

『宇宙を解く唯一の科学 熱力学』(ポール・セン/単行本/河出書房新社)

この順番でも良い読書体験になった。
でも、もし読む前の自分になら、
以下の順番、以下のような考えで読むことをおすすめする。

1冊目は、『宇宙を解く唯一の科学 熱力学』(ポール・セン)
まず、科学者の物語を楽しみつつ、熱力学史の流れを把握する。

2冊目は、『エントロピーをめぐる冒険 初心者のための統計熱力学』(鈴木炎)
一般向けの理系的解説に触れる。熱力学史の流れも復習になる。

ここまでは自分の内容理解度はあまり気にしない。
ベースのようなものができればOK。

3冊目は、『新装版 マックスウェルの悪魔 確率から物理学へ』(都筑卓司)

4冊目は、『エントロピーと秩序 熱力学第二法則への招待』(ピーター・W・アトキンス)

ベースをもとに、名著と評される二冊と腰を据えて向き合う。

5冊目は、『熱とはなんだろう 温度・エントロピー・ブラックホール……』(竹内薫)
ブラックホールのエントロピーのところを熱心に読む。

これは、あくまで私のごく個人的な好みだが、こんな順番・考えで読むのが自分には合っていたと思う。

科学者の物語が好きな文系読者なら、まず、『宇宙を解く唯一の科学 熱力学』(ポール・セン)を手にとってみてはどうだろうか。

【単行本】
宇宙を解く唯一の科学 熱力学
著 者:
ポール・セン
出版社:
河出書房新社
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初投稿日:2026年03月16日

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