熱力学の歴史に興味がある方におすすめの本
- 著 者:
- ポール・セン
- 出版社:
- 河出書房新社
熱力学の歴史に興味がある方、とくに、〝科学者の物語〟が好きな方におすすめしたい。
本書は、数多の科学者たちの人物像と研究を浮き彫りにする筆致が素晴らしく、読み物としておもしろい。(逆に、科学者の生い立ちやエピソードに興味がない方には、おすすめできない。)
著者紹介をみると、ポール・センは「ドキュメンタリー作家」。「ケンブリッジ大学で工学を学んでいたときに熱力学と初めて出合う」と記されている。
このような経歴から、すなわち、たしかな知識とドキュメンタリー作家としての描写力が掛け合わされて、すぐれた科学読み物が生み出されたのだ、と思う。
構成の良さも本書の魅力だ。
3部構成のボリュームのある本だが、これは2冊分の価値があると私は捉えている。
第Ⅰ部と第Ⅱ部で、熱力学・統計力学の主な歴史について知ることができる。科学者の名前を挙げると、カルノーからボルツマンとギブズまで。熱力学史の典型的な流れで、ここまでで本書の半分くらい。1冊分の価値がある。
第Ⅲ部は、「熱力学のさまざまな帰結」と題して、プランクやアインシュタインから、スティーヴン・ホーキングまで。「量子」からブラックホールの熱力学まで幅広い話題を扱っている。「情報エントロピー」や、「マクスウェルの悪魔」と呼ばれる思考実験など、多様な知見に触れられる。
大まかにはこのような構成なので、第Ⅱ部まで(半分ほど)で1冊分の価値がある、と私は思っている。
そのため、もしボリュームがある本が苦手なら第Ⅱ部まで読んで、第Ⅲ部は「マクスウェルの悪魔」と呼ばれる思考実験の箇所のみ読む。これで、私たち一般が熱力学・統計力学の歴史を知るには十分な内容となっている。このような読み方もできるので、分厚い本ということで敬遠する必要はない。
もっと言えば、3部構成だが、各章は長くない。各章は短めに分けられている、と私は感じた。そのため、各章を少しずつ読み進めることもできる。まとまった読書時間をとるのが難しいなら、そういう読み方もできる。
本書に登場する科学者については、書評ページを。































