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恐竜はなぜ鳥に進化したのかーー絶滅も進化も酸素濃度が決めた

書籍情報

【文春文庫】
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著 者:
ピーター・D・ウォード
訳 者:
垂水雄二
出版社:
文藝春秋
出版年:
2010年10月

大気中の酸素濃度は、地質年代とともに変化してきたという。この酸素濃度の変動の観点から、生物の進化を論じていく。また、恐竜の体制(ボディ・プラン)を詳述

ヒマラヤ大山脈の最高峰エヴェレスト(チョモランマ)の山頂は、薄い空気のなかに突きだしている。人間にとっては「酸素不足」による死の危険が迫ってくる過酷な環境だ。だが、この山頂のはるか上空を、気高いインドガンの群れは、苦もなく飛んでいくことができる。

このような内容の描写からはじまり、著者はこう述べる。「鳥類は、哺乳類に比べてずっとわずかな酸素しか必要としないのだ」。「酸素を利用しつくすという点で鳥類が脊椎動物のほかのどのグループよりもすぐれていることは、ずっと以前から知られていた」と。

どうしてそうなのか? どのようにしてそうなったのか? それを問うことが本書の目的だと述べ、そしてつぎのような問いを投げかける。「もし、地表すなわち標高ゼロ地点でさえ、現在よりも空気の薄かった時代に鳥類が進化したのだとしたらどうだろう? そしてもし、鳥類が薄い空気のなかで抜群の能力を発揮できるのだとしたら、鳥類の祖先である恐竜については、どうだったのか?」

現在の大気中の酸素濃度は21%だが、地質年代とともに酸素濃度は変化してきたのだという。この酸素濃度の変動の観点から、生物の進化を論じているのが本書だ。

まず、「導入的な二つの章」がある。動物の呼吸や「地質年代における酸素濃度の変化」などについて述べ、本書の中核をなす仮説を提示している。

仮説2.1
「酸素レベルの低下は、高い酸素レベルの時期よりも高い異質性(disparity)の出現率、すなわち体制の多様化の引き金となる。」

仮説2.2
「動物の多様性(diversity)は酸素レベルと相関関係にある。もっとも高い多様性は相対的に高酸素濃度の時期に見られる。」

導入的な章のあとで、カンブリア紀から白亜紀までを中心に「旅」をして、生物進化の歴史において注目されている出来事と酸素濃度との関連を見ていく。たとえば、「カンブリア紀爆発」、生物の陸上進出、生物の巨大化、「三畳紀爆発」、などの話題がある。

もちろん、恐竜の進化について論じている。著者はつぎのような仮説を提示する。

仮説8.1
「二足歩行した最初の恐竜の体制[ボディ・プラン]は、三畳紀中期の低酸素に対応して進化した。二足歩行姿勢をもつことで、最初の恐竜はキャリアの制約が課す呼吸の制限を克服した。このように三畳紀の低酸素は、この新しい体制の形成を通じて、恐竜の誕生の引き金となった。」

そして本書は、恐竜は現生の鳥類のような「気囊システム」をもっていたのか? 「外温性」か「内温性」か、を論じていく。

ほかにも、さまざまな話題がある。最後に、「酸素の未来を危ぶむべきか?」という短めの章がある。

ひとこと

単行本は、2008年に刊行された。

初投稿日:2016年05月20日

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