ジョゼフ・ルドゥーの本、どれを読む?

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恐怖の脳内メカニズムの著名な研究者。科学の質を高いレベルに保った本格的な解説書

ジョゼフ・ルドゥー(Joseph E. LeDoux)は、「情動」研究の第一人者であり、恐怖の脳内メカニズムの研究者としてよく知られている。脳部位では、とくに「扁桃体」を詳細に解説している。

還元主義者であり、心は「物理的システムの産物」と考えているが、「心について考えるほかの方法を全面的に拒否するつもりはない」(『シナプスが人格をつくる』第2章原注19参照)という柔軟さを持っている。

執筆においては、一般読者を対象にしたものであっても科学の質を高いレベルに保つように努力して書いているようだ。解説するトピックの内容だけではなく、そこに至るまでの研究の流れが把握できるように書いてあるのも特色といえる。

情動というトピックに興味があるなら、ぜひ読んでおきたい著者のひとり。恐怖の脳内メカニズムと関連する「不安」に興味のある方にとっても、有意義な知見をもたらしてくれる著者だ。

一般向けのあまりに簡略化された説明に物足りなさを感じている方で、専門書ほどの詳細な解説は不要という方には、ジョゼフ・ルドゥーの本をおすすめしたい。

日本語表記が「ジョセフ・ルドゥー」「J.E.レドゥー」と著書によって異なっているが、同著者である。

ジョゼフ・ルドゥーの書籍

本記事投稿時点(2015年1月11日)で、ジョゼフ・ルドゥーの著書は3冊(日本語版。私の知る限りで)

「脳が自己をつくる生物学的メカニズムを探求」する『シナプスが人格をつくる』

シナプスとは「ニューロン間の小さな間隙」のことで、「あなたはあなたのシナプスだ」というのが本書の結論。この結論を読者に伝えるために、神経科学の基礎知識から丁寧に解説していく。自己というトピックに興味があり、それを還元主義的に考えてみたいという方にぴったりの本。

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シナプスが人格をつくる

「情動」研究の発展を辿り、恐怖の脳内メカニズムを解説する『エモーショナル・ブレイン』

情動はどのように研究されてきたのか、また情動の進化はどのようなものか。そんなところから説き起こし、ジョゼフ・ルドゥーの専門である恐怖の脳内メカニズムを解説する。「恐怖条件づけ」という研究手法や、「恐怖を扱う情動システムの中核」である扁桃体のことがよくわかる。

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エモーショナル・ブレイン

分割脳(分離脳)に関する知見が得られる本『二つの脳と一つの心』

M.S.ガザニガとの共著。1980年に出版。かなり前の本だが、左右の大脳半球をつなぐ脳梁が切断された「分割脳(分離脳)」について知ることができる。『シナプスが人格をつくる』によると、1970年代に、ガザニガはルドゥーの博士論文の指導教官だったそうだ。

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二つの脳と一つの心

ジョゼフ・ルドゥーの本、どれを読む?

ジョゼフ・ルドゥーの見解を知るなら、現時点では『エモーショナル・ブレイン』か『シナプスが人格をつくる』のどちらかを選ぶことになると思う。

「情動」に興味があるなら『エモーショナル・ブレイン』を、「自己」に興味があるなら『シナプスが人格をつくる』を選ぶと思われる。

もし、「情動」「自己」どちらにも同程度の興味をお持ちなら、私は『シナプスが人格をつくる』をおすすめしたい。

というのは、出版年が後になる『シナプスが人格をつくる』では、前著『エモーショナル・ブレイン』の内容が、要約的にとりこまれており、情動と自己という両方の内容を知ることができる。一方で、『エモーショナル・ブレイン』は、そのタイトルどおり情動というところに特化している。

もちろん、情動を詳細に知りたいという方であれば、『エモーショナル・ブレイン』のほうがよいし、たぶんそちらを手にすると決めているはず。ただし、情動を深く知りたいと思っていても、神経科学の基礎知識をまったく持たない読者であれば、『シナプスが人格をつくる』のほうがよいと思う。この本は、神経科学の基礎知識を丁寧に解説しているので、理解しやすい。

どちらが読みやすいかといえば、『シナプスが人格をつくる』のほうだと私は感じた。

どちらも分厚い本なので、まず『シナプスが人格をつくる』を読んで、もしこの著者が好みなら、『エモーショナル・ブレイン』を読んでみるのがよいのではないだろうか。

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シナプスが人格をつくる

ジョゼフ・ルドゥー profile

シナプスが人格をつくる』より一部引用

1949年生まれ、ニューヨーク大学神経科学センター教授。

初投稿日:2015年01月11日

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