「細胞シート」の奇跡 ——人はどこまで再生治療できるのか

書籍情報

【単行本】
No image
著 者:
岡野光夫
出版社:
祥伝社
出版年:
2012年2月
定 価:
本体1,400円+税

驚嘆すべき医療テクノロジー「細胞シート」のすべてを、開発者自らが明らかにする。再生医療のすごさが伝わってくる一冊

「革新的な医療テクノロジー」として注目を集めている「細胞シート」。その開発者である岡野光夫が、細胞シートのすべてを明らかにする。

「細胞シートとは、自分の細胞を培養して増やし、患部に移植するための厚さ0・1ミリ以下の薄いシート状のパッチのこと」(数字はアラビア数字に変換して引用)

まず序章で「世界初の「細胞シート」による心臓手術」が紹介される。

「唯一の根本治療は、これまで心臓移植だけ」だった「拡張型心筋症」の患者が、自分の左大腿部の筋芽細胞をもとにして作った細胞シートを、心臓の患部に「シールを貼るようにペタッと貼り付ける」手術を受け、「心臓移植を受けることなく、ほぼ正常な状態にまで回復」し、退院した。

筋芽細胞には「機能を低下させた筋肉組織を修復する働き」があり、大腿筋でも心筋でも同じように働くそうだ。患者の心臓は、この自己修復機能を失っていた。左大腿部の筋芽細胞をもとにして作った細胞シートを心臓の患部に「貼り付ける」と、「健康な筋芽細胞が心臓と一体化」し、「この移植された細胞シートは構造と機能が保持され、毛細血管を誘導して周囲組織を修復するサイトカイン(特定の細胞に情報を伝達するタンパク質)を持続的かつ長期にわたって出し続ける」のだそうだ。自分の細胞なので、拒絶反応もないという。「自分の細胞で治す時代」が到来していることを示すエピソードだ。

この話題を入口として、再生医療とは何かが語られる。ES細胞やiPS細胞の話題ももちろん登場。そして、細胞シートがどのように生まれ、どのような使い道があるのかが解説される。著者は、医学と工学の連携の重要性を強く主張する。細胞シートは「医工連携の果実」だという。

細胞シートを用いて臓器をつくる試みの話も魅力的。細胞シートは、薄いシートとしてだけではなく、重ねることで臓器をつくる、という挑戦がなされている。臓器をつくるにあたって「分厚い組織にどうやって「血管」を通すかという問題」があるのだが、これをクリアするための研究者たちの試行錯誤がすごい。

そんな日本発の医療テクノロジーだが、「細胞シート工場」はフランスで立ち上げられた。医療ベンチャー「セルシード」は、なぜ日本で立ち上げられなかったのか。日本の行政についても語られる。

再生医療に興味のある方には、おすすめの一冊。

ひとこと

専門的な内容のところも読みやすい。細胞シートの可能性と研究者たちの挑戦に驚嘆させられる。

初投稿日:2014年12月28日

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