宇宙のダークエネルギーーー「未知なる力」の謎を解く
書籍情報
- 著 者:
- 土居守/松原隆彦
- 出版社:
- 光文社
- 出版年:
- 2011年9月
観測により、宇宙の膨張が〝加速〟していることが明らかになってきた。「これは、宇宙の中に、膨張を加速させる「未知の力」が働いていることを意味」するという。この未知なるものに「ダークエネルギー」という名がつけられた。本書は、2部構成の形で、「理論」と「観測」の両面からダークエネルギーを解説する
宇宙は膨張している。それは、ハッブルによって発見された。この発見以来、「宇宙の膨張は遅くなっていくはずだというのが標準的な考え方」だった。ところが1998年、パールムッターらのチームと、シュミットらのチームが、Ⅰa型超新星を用いた測定から、「宇宙膨張は現在加速しているという驚くべき結果を発表した」
宇宙の膨張は〝加速〟している。それがわかると、「その簡単な説明として宇宙項が復活」させられたという。本書では、まず、相対性理論を簡単に紹介する。そして、一般相対性理論の基本になる方程式「アインシュタイン方程式」に、「宇宙項」が、なぜ付け加えられ、なぜ取り下げられ、なぜ復活したのかを解説する。
宇宙項とは何か、ダークエネルギーとは何か、つぎのように述べている。少し長いが引用したい。
「宇宙項というのは、簡単に言うと空間に薄く広がったエネルギーです。物質がまったく存在しない真空中にも、宇宙項のエネルギーは存在します。そして、その体積あたりのエネルギーは一定です。そのエネルギーは宇宙が膨張しても薄まりません。空間が大きくなればそれに比例して全体のエネルギーも大きくなるのです。これは通常の物質とはまったく異なる性質です」
そして、こんなふうにも述べる。「宇宙項というのは、(中略)言ってみればご都合主義的にアインシュタイン方程式に付け加えただけのものです。しかも、その項の値は極度に不自然で小さいものなのです。その存在は、なにか私たちに知られていない宇宙の原理があることを強く示していると考えられます」
こう続く。「そこで、宇宙項のような効果を、もっと基本的な原理から説明できないかと考えられるようになりました。宇宙に薄く広がり、空間が膨張するにつれて同じように増えていくようなエネルギーがあれば、宇宙項と同様の効果があり、宇宙の加速膨張を説明できます。それは、宇宙項と完全に同じではなく、空間体積あたりのエネルギーは一定ではないかもしれません」。それが何なのかはわからない。マイケル・ターナーは、その正体不明のエネルギーを「ダークエネルギー」と名づけたのだという。
このあと、「ダークエネルギー、あるいはそれに代わり得る加速宇宙を説明する試み」を紹介していく。これが第1部だが、ここでは宇宙論の基本的な話題を織り込みながら解説している。
第2部は、観測の側面からダークエネルギーに迫る。まず、天体観測の方法を詳細に解説する。たとえば、天体望遠鏡の役割、「天体観測に用いられるCCDカメラ」について、分光観測、赤方偏移について、などなど。恒星のみかけの大きさや明るさについて、宇宙の大規模構造なども説明。
そして、ダークエネルギーの測定方法を紹介する。「超新星」を用いた方法、「宇宙背景放射のゆらぎ」を用いた方法、「銀河分布」を用いた方法を説明している。また、この3つの方法から求めた「最新の宇宙のエネルギー密度の測定結果をまとめて示し」ている。「これは、ダークエネルギーの正体がどこまで調べられているのかを示す重要な図」だという。
他にも、観測にまつわるさまざまな話題がある。
ひとこと
「バリオン音響振動」も詳しく説明している。