これが物理学だ!
著 者:
ウォルター・ルーウィン
出版社:
文藝春秋
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デカルトの誤り
著 者:
アントニオ・R・ダマシオ
出版社:
筑摩書房
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宇宙を創るダークマター
著 者:
キャサリン・フリース
出版社:
日本評論社
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意識と自己
著 者:
アントニオ・R・ダマシオ
出版社:
講談社
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物理学者のすごい思考法
著 者:
橋本幸士
出版社:
集英社インターナショナル
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量子革命
著 者:
マンジット・クマール
出版社:
新潮社
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私たちの世界観を揺さぶる超弦理論(超ひも理論)

「私たちの世界観を揺さぶる超弦理論(超ひも理論)」メイン画像

超弦理論の驚くべき世界観。空間は幻想なのか!?

私たちの住む世界は、10次元あるいは11次元時空かもしれない――超弦理論(超ひも理論)は、私たちには認識できない別次元が存在することを示唆している。

このSFのような世界観を唱える超弦理論は、現代物理学の2本柱といわれる相対性理論と量子力学を統合し、究極の理論となることが期待されている注目の理論。そんな大真面目な物理理論が、余剰次元と呼ばれる別次元の存在を唱えているのだからおもしろい。

超弦理論では、それ以上は分割できない基本要素を「弦」(「ひも」)と考え、クォークや電子などの既知の素粒子は、「弦」の振動によって生み出されていると考える。その振動の仕方によって、クォークになったり電子になったりするそうだ。たとえるなら、バイオリンの弦が振動することでさまざまな音色を奏でるようなものだという。

ということは、私たちも他の動物も、地球も太陽も他の無生物も、この広大な宇宙のすべてのものは、弦の振動で生まれていることになる。超弦理論は、このように「弦」を究極の基本要素とするところからはじまったようだ。

ところが、研究が進むにつれて「弦」と同様に「ブレーン」と呼ばれる要素も大切であることがわかってきた。ブレーンとは、高次元空間に存在する膜のような物体だそうだ。その名は、メンブレーン(膜)に由来する。ブレーンは2次元の膜だけではなく、3次元の立体や、それ以上の次元に伸びるものもあるという。

ブレーンの話題でもっとも私たちの興味を引くのは、「ブレーンワールド(膜宇宙)」だろうか。私たちは高次元時空に存在するブレーン上に住んでいるのかもしれないというのだ。超弦理論から直接導かれたブレーンワールドのほかに、モデル型のブレーンワールもあるそうだ。リサ・ランド―ルとラマン・サンドラムが提唱した「ワープした余剰次元」という理論は、日本でも話題になった。

ブレーンについての洞察により、超弦理論はさらなる発展を遂げる。そして驚くべき主張がなされる。研究の結果、空間の「次元」が変化するプロセスが発見され、このことを考察すると、「空間は幻想」という驚くべき見解に辿り着くのだ。幻想とはどう意味なのか。超弦理論の専門家である大栗博司は、「温度」の例を用いて説明する。

私たちは「暑い寒い、熱い冷たい」と「温度」を感じて暮らしているが、ミクロな視点でみれば、これは分子の運動にすぎない。分子レベルでは温度という概念は存在しないので、マクロな世界の私たちが感じているものにすぎない、つまり二次的な概念といえる。「空間は幻想」というのも、空間は二次的な概念という意味だそうだ。たしかに私たちは「空間」を感じて暮らしている。しかしミクロな視点でみれば、温度の実体が分子の運動であるように、空間も何かより根源的なものによって生じていると考えられるようなのだ。ミクロな視点で世界を眺めると、空間さえもが基本的なものとは言えなくなるようだ。

いま注目を集めているM理論も、超弦理論の研究の延長線上にあるものだ。5種類の超弦理論と「11次元時空の超重力理論」を包含する理論が「M理論」だ。たとえるなら、M理論という島があるとすると、5種類の超弦理論と「11次元時空の超重力理論」は、その島の半島部分といったイメージのようだ。いま超弦理論の研究者たちは、謎に包まれているM理論の解明に取り組んでいるという。11次元時空を唱えるM理論こそが、究極の理論なのかもしれない。

不可思議で魅惑的な話題が満載の超弦理論だが、現時点では数学的なものであり、実験によって検証されたものではない。このような未検証の理論がもてはやされていることに疑問を抱く物理学者たちもいる。超弦理論は物理学といえるのか、そんな声もあるようだ。

専門家は、専門家だからこその思いがあるのだろう。読書を楽しむ一般人にすぎない私は、こう思うだけだ。空間とは何か、あるいは時間とは何かと考えることは、私たちの視野を広げてくれる。そもそも「あたりまえ」とは何かと考えてみると、それは多くの人が理解できるもの、信じているものにすぎない。よく言われるように、私たちヒトはヒトとしての生物学的しくみの範囲でしか世界を見ることができない。私たちが知覚できないからといって、それが「ない」とは限らない。この世界の成り立ちは、普段私たちが思っているほど自明とはいえないようだ。

この世界はいったいどんな成り立ちをしているのか。そんなことに想いを馳せるための新しい視点をもたらしてくれるのが、この超弦理論だ。

本来、文系の私は、高度な数学である超弦理論の世界を垣間みることなどできない。しかし数式なしでやさしく解説してくれる良書のおかげで、この不可思議な世界観を楽しむことができる。とはいえ、もともとが難解なものなので、その楽しみは本の前で頭を抱えることとセットではあるのだが。

このレビューの参考文献であり、おすすめ本でもある良書を下記に記載した。わくわくする魅惑的な世界観を唱える超弦理論を読書テーマにしてみるのはどうだろうか。

超弦理論(超ひも理論)を知る書籍

『重力とは何か』

もっとも気軽に超弦理論の概要を知ることができる本。超弦理論の専門家自らが執筆し、読みやすい文章、しかも話題になった本とくれば、読んで損はないはず。まだ重力関連の本を読んだことがない方であれば、本書がおすすめ。超弦理論をおもしろそうだと思ったら『大栗先生の超弦理論入門』へ。

【幻冬舎新書】
重力とは何か
著 者:
大栗博司
出版社:
幻冬舎
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『大栗先生の超弦理論入門』

超弦理論の世界を覗いてみようと決めたのなら、本書がおすすめ。超弦理論の専門家である大栗博司が、数式なしで解説している本なので、これは文系読者の超弦理論入門書の決定版といってよいと思う。ブルーバックスなのでボリュームもほどよく、入門書として最適。

【ブルーバックス】
大栗先生の超弦理論入門
著 者:
大栗博司
出版社:
講談社
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『エレガントな宇宙』

世界的なベストセラー。ブライアン・グリーンの書籍はどれもボリュームたっぷり。カラビ―ヤウ空間の解説に多くのページを割いている。本書は入門書というより、超弦理論に興味をもった方が読む本だと思う。読む価値あり。

【単行本】
エレガントな宇宙
著 者:
ブライアン・グリーン
出版社:
草思社
No image

『ワープする宇宙』

余剰次元とブレーンワールドを解説している。全米ベストセラー。20世紀物理学の概説もある。丁寧かつ本格的な解説で、ボリュームたっぷり。数式なしで余剰次元とブレーンワールドを知るなら必読書といえる良書。

【単行本】
ワープする宇宙
著 者:
リサ・ランドール
出版社:
日本放送出版協会(現/NHK出版)
No image

『超ひも理論を疑う』

公平な冷静な姿勢で超弦理論への疑問を呈する。

【単行本】
超ひも理論を疑う
著 者:
ローレンス・M.クラウス
出版社:
早川書房
No image
初投稿日:2014年12月03日

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