X線天文学 ——X線星からブラックホールへ

書籍情報

【自然選書】
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著 者:
小田稔
出版社:
中央公論社(現/中央公論新社)
出版年:
1975年12月
定 価:

X線天文学のパイオニアである小田稔が、X線天文学の進展(1962年の幕開けから1975年まで)を解説したもの。X線天文学の歴史上の有名な天体が、どのように研究されてきたのかが記されている

まず、X線天文学のはじまりを記したところを紹介したい。

「X線天文学のはじまりは一九六二年のことである。マサチューセッツ工科大学のロッシ B. Rossiとアメリカン・サイエンス・アンド・エンジニアリング社のジャコーニ R. Giacconiたちのグループは、X線カウンターをのせた「エアロビー」とよばれる観測ロケットを大気圏外に送って、はじめて宇宙からくる強いX線をとらえたのである」

著者の小田稔は、ロッシやジャコーニらとともに、X線天文学のパイオニアとして活躍した科学者だ。その第一人者によって、X線天文学の誕生からおよそ10年間の進展が描き出されているのが、本書だ。1975年に出版されており、当時の科学者たちが、どのように 「X線星」を探究したのかが伝わってくる。

たとえば、こんな描写がある。

「「あいつは、たしかに何かをわめいているんだがなあ」。二月の末ごろ、ジャコーニと私は人工衛星「ウフル」が送ってくる信号のグラフを眺めながら、幾晩も考えあぐねて、ためいきをついていた。白鳥座にあるX線星の一つ Cyg X–1が不思議な時間変動をしていたのである。そして、その変動の特徴がなかなかつかめなかったのである」

こんな描写もある。

「あらかじめジャコーニとのあいだに、衛星が正規の観測を始めたならば、その初期にこの計画に参画して観測とデータ解析の方針の決定をたすける約束をしていた筆者は、この経過をハラハラしながら見ていたが、今年(一九七一)の一月に入って間もなくデータがとれはじめたので、ボストン郊外ケンブリッジに赴いた。落ち着く間もなく、私はジャコーニにASEの「ウフル・データ・ルーム」と名札のかかった部屋につれていかれた」

人工衛星「ウフル」は、「X線天文学としてははじめての衛星」。1970年12月に、「アフリカのケニア沿岸の海中に建てられているイタリアの「サン・マルコ」ロケット基地から」打ち上げられた。ウフル(UHURU)は、スワヒリ語で「自由」を意味するそうだ。

この本には、当然ながら、X線観測装置や観測結果といった、観測にまつわる解説がたくさん出てくる。どんな感じの説明かを、部分的に抜き出して、すこし紹介してみたい。

「……略……。そこでなんとかX線の分野にも望遠鏡に匹敵する鋭い角分解能をもつ装置ができないものかと工夫がなされた。」「これはのちに「すだれコリメーター」と呼ばれることになった装置で、離れた二枚のすだれを通して天体の見えかくれするありさまから、その天体の位置と大きさとを鋭い角分解能で測るものである。この技術で一九六六年にはSco X–1は視角にして三〇〇分の一度よりは小さい星のようなものだということがわかり、その位置も一分角、つまり六〇分の一度よりは高い精度できめられた」

もう一つ。

「光で見たSco X–1の顕著なことは、ふつうの星に比べてきわめて青い、紫外線の強いものであること、ふつうの星に見られるスペクトルの吸収線が見られず、輝線が見えていること、そして数時間の間に強度がかなり大きく二倍くらいふらふらして、ときには一〇分間ほどチカチカと輝くことなどである(図1)。一方、X線観測によっても、ときによってX線の強度が違っていることがわかってきた。強度と波長の関係を描いてみると、図2のようになる。これは、じつは点線で一例を示すように、高温の透きとおったプラズマの雲のスペクトルに典型的な形をしている。……略……」

こういう感じの説明がたくさん出てくる。

1975年に出版された本だが、X線天文学の黎明期を知るうえでは最適の本だと思う。

ひとこと

X線天文学の歴史上の有名な天体、さそり座X–1、はくちょう座X–1、かに星雲などが、どのように研究されてきたのかが記されている。(もちろん、この本が出版された1975年までの情報)

本書は、このレビューを書いている時点で入手困難になっている。

初投稿日:2017年08月06日

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