重力波とはなにか ——「時空のさざなみ」が拓く新たな宇宙論

書籍情報

【ブルーバックス】
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著 者:
安東正樹
出版社:
講談社
出版年:
2016年9月
定 価:
本体1,080円+税

本書は、重力波とは何かを詳しく解説し(一般向け解説の範囲)、重力波の初観測について丹念に述べ、重力波検出の成功によって幕開けした「重力波天文学」にどのようなことが期待されているのかを論じた一冊

「2016年2月11日、現地時間午前、アメリカ・ワシントンDCの記者会見会場で、LIGOプロジェクトのリーダー、デイヴィット・ライツィは、ゆっくりとした口調で話し始めました」と著者は綴る。

「みなさん、われわれは重力波を検出した。やりました!(Ladies and Gentlemen, we have detected gravitational waves. We did it!)」とライツィは語り、会場は歓声に包まれたという。「重力波の初観測」が成し遂げられたことが発表された「歴史的な瞬間」だ。2015年9月14日に、LIGOのハンフォード観測所とリヴィングストン観測所で、ほぼ同時に重力波をとらえたそうだ。

これは、「地球から約13億光年離れた場所で起こった、太陽の36倍の質量をもつブラックホールと、太陽の29倍の質量をもつブラックホールからなる連星が合体し、太陽の62倍の質量をもつ1つのブラックホールが生まれる際に放出された重力波」だという。

「合体前の2つのブラックホールの質量の和(36+29=65)よりも、合体後のブラックホールの質量は太陽質量の3倍分だけ小さくなっていた」。「これは、その質量に相当する分だけ重力波のエネルギーとして放射されたということを意味」しているという。

「LIGOが観測した重力波信号は、時間にすれば0・2秒ほど」。著者はこう記す。「たったの0・2秒が、これほど大きな意味をもったことが人類史においてかつてあったでしょうか。しかも、その信号には想定していたよりはるかに多くの、そして意外な宇宙の情報が盛り込まれていました」と。

重力波検出実験の先駆者は、ジョセフ・ウェーバー。彼は、1969年に重力波の検出に成功したことを発表したが、議論の末に、彼の主張は否定されている。

ウェーバーが開発したのは「共振型重力波検出器」だが、LIGOなどが用いているのは、「レーザー干渉計型重力波望遠鏡」

レーザー干渉計を用いた重力波望遠鏡は、1970年代の初めに考案される。その後、「数メートルから40メートルの基線長をもつレーザー干渉計のプロトタイプ」が作られる。そして、「第一世代のレーザー干渉計型重力波望遠鏡」、「第二世代」へと「進化」していく。

日本国内では、1990年代に入ると、「東京大学に3m、国立天文台に20m、そして宇宙科学研究所では100mの基線長をもったプロトタイプ干渉計」が建設された。この頃に、著者は、大学院生として重力波の研究を始めたという。

その後、著者は、「第一世代」のTAMA300の建設と感度向上に携わる。そして、「第二世代」の(「第二・五世代」と呼ばれることもある)KAGRAにおいて、「レーザー干渉計の構成検討や基本設計の取りまとめなどの貢献」をする。

本書は、そのような初期の頃から重力波の研究を行ってきた著者が、重力波とは何かを詳しく解説し(もちろん一般向け解説の範囲)、重力波の初観測について丹念に述べ、重力波検出の成功によって幕開けした「重力波天文学」にどのようなことが期待されているのかを論じた一冊だ。

重力波は、アインシュタインの一般相対性理論から導かれたもの。著者は、アリストテレスから始めて一般相対性理論までをざっと辿り、最後には、一般相対性理論と量子力学を融合させた「量子重力理論」の話題を盛り込む。

また、重力波の観測と大きな関わりのある、「コンパクト天体」(ブラックホール、中性子星、白色矮星をまとめて、コンパクト天体もしくは相対論的天体と呼ぶそうだ)と、「これらコンパクト天体からなる連星系(コンパクト連星)」に関する話題も紹介している。

もちろん、「間接的」に重力波の存在を証明したという研究や、「原始重力波」の話題も登場する。

各章末には、「本章のポイント」が置かれている。

ひとこと

相対性理論や宇宙論の一般向け解説本を好んで読んできた方向きの本だと思う。

初投稿日:2016年11月15日

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