これが物理学だ!
著 者:
ウォルター・ルーウィン
出版社:
文藝春秋
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デカルトの誤り
著 者:
アントニオ・R・ダマシオ
出版社:
筑摩書房
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宇宙を創るダークマター
著 者:
キャサリン・フリース
出版社:
日本評論社
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意識と自己
著 者:
アントニオ・R・ダマシオ
出版社:
講談社
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物理学者のすごい思考法
著 者:
橋本幸士
出版社:
集英社インターナショナル
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量子革命
著 者:
マンジット・クマール
出版社:
新潮社
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真理の探究ーー仏教と宇宙物理学の対話

書籍情報

【幻冬舎新書】
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著 者:
佐々木閑/大栗博司
出版社:
幻冬舎
出版年:
2016年11月

仏教学者の佐々木閑と理論物理学者の大栗博司の対話。できるかぎり正しく世界を見ること、これが対話の軸に据えられている

佐々木閑の「あとがき」を見ると、本書は、中日文化センターで行われたトークセッション(三回)の内容をもとに、「できるだけセッションの内容に沿った形で」作られた対談本のようだ。

まず、佐々木閑による「序」がある。ここで、つぎのように述べている。「釈迦の仏教からいかにして大乗仏教がつくられていったのかはのちほど説明しますが、私が本書で中心的に論ずるのは、釈迦の教えとしての仏教です。ですから、この対話の中で私が単に「仏教」という言葉を使った場合、それは基本的に釈迦の時代の仏教を指すものだと思ってください」

「序」で、佐々木閑は、「仏教と科学の接点」について語っている。

第一部では、理論物理学者の大栗博司が語る(ときおり佐々木閑が「質問や合いの手」を入れている)。まず、「科学の方法について」から話を始めて、近代科学において「しばしば誤解される点」を二つ述べる。そして、「自然界の階層構造」を見ていき、宇宙に関するめぼしい話題とアインシュタインの相対性理論を概説し、最後にブラックホールと、ホーキングが提示した「ブラックホールの情報問題」を紹介する。

「ブラックホールの情報問題」の紹介後に、こう述べる。「この問題を解決するには、一般相対性理論と量子力学を統一する必要があります。私が専門にしている超弦理論は、この二つの理論を統一できる可能性を持つ理論です。それは同時に、自然界の根源を説明する「究極の理論」になるかもしれません」と。

超弦理論については、本書後半の「特別講義」で概説する。この特別講義では、超弦理論の世界を紹介し、「二十世紀初頭に活躍したインドの天才数学者シュリニバーサ・ラマヌジャン」にまつわるエピソードを綴り、ブラックホールの情報問題と「ホログラフィー原理」について述べ、最後に、「量子もつれ」と「ブラックホールの防火壁問題」を簡単に紹介している。

第二部では、仏教学者の佐々木閑が語る(ときおり大栗博司が「質問や合いの手」を入れている)。佐々木閑は、こう述べている。「ここでは、釈迦の世界観について、そしてさらには、その釈迦の教えが次第に体系化されていって、最終的に大乗仏教へと変容した、その流れについてお話ししたいと思います」と。また、本書後半の特別講義では、「大乗仏教の起源に迫る」

第三部では、佐々木閑と大栗博司が語り合う。ここには、三つの大きな見出しがある。「世界を正しく見るということ」、「いま釈迦の教えに何を学ぶか」、「「人生の意味」はどこにある?」の三つ。

たとえば、こんな話がある。

「アビダルマ」の話が出た後で、大栗博司が「そのアビダルマの仏教的精神分析のことをもう少し教えていただけますか」と言う。

佐々木閑は、つぎのように説明する。

「釈迦は精神と物質の二元論者ではなく、精神と物質が連結され、一体化した形で世界が成立していると考えました。したがって私たちの精神世界と物質世界をつなげるコネクターがあると考える。それが、人間の認識器官です。認識器官は、組成は物質だけれども作用は精神なんですね。外界の物質と、心と、その認識器官の三つが一体化したところに私たちの存在がある。釈迦はそう分析しました」

もう少し続く。

「では、その物質や心や認識器官はそれぞれ何種類あるのか。……略……、仏教では精神との対応関係が分類の線引きになるので、外界の種類は結局のところ認識が何種類あるのかによって決まります。だから、外界の物質は全部で五種類に分けられるんです」

大栗博司が、「人間に「五感」があるから、それに対応して物質も五種類と考えるんですね」と言う。

佐々木閑が、こう続ける。「そうです。そして仏教ではさらに、……略……、もうひとつ、心でしか認識できない対象があると考えます。ですから、五種類の肉体上の認識器官に加えて心という内的な認識器官も足して、六種類の認識器官を想定します。それを「六根」と言うのです。この、物質と精神と認識器官の一体化した世界が、時間と共に変化していくわけです。……略……」

他には、こんな話がある。

大栗博司が、つぎのように語る。

「私は科学者なので、あらかじめ「これは正しい」「あれは間違っている」と教条的に信じることはありません。ではどう考えているかと言うと、私はいわゆる「ベイジアン」で、ベイズ推定で信頼度を測ります」

こう続く。

「ベイズ推定というのは、もともとは確率や統計の理論ですが、新しい経験をすることによって、確率の評価をどんどんアップデートしていくという考え方です。「経験に学ぶ」ということを、数学的に表現したのがベイズ推定です。……略……」

カール・ポパーの「反証可能性」、重力波の話を交えて語っている。

他にも、さまざまなことを語り合っている。

ひとこと

この本のNDC分類は「180」(仏教)だが、著者の一人が大栗博司であること、また、物理や宇宙の話が登場することから、科学の本ともいえる。とはいえ、本書をどちらのコーナーに置くか、という選択になれば、やはり仏教のコーナーになると思う。当サイトは科学本を紹介するサイトなので、どのような科学的な話題に触れることができるのかに光を当てて本書を紹介した。ジャンルは、大栗博司が著者の一人なので、「物理学」とした。

初投稿日:2017年07月23日

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