食欲の科学 ——食べるだけでは満たされない絶妙で皮肉なしくみ

書籍情報

【ブルーバックス】
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著 者:
櫻井武
出版社:
講談社
出版年:
2012年10月
定 価:
本体820円+税

「食欲」を制御する脳のしくみを、一般読者に向けて詳しく解説した本

食欲とは、「長期的には脂肪の、短期的には血糖値の変動に伴って亢進あるいは抑制されるもの」だという。これがどういうものなのか、その脳内メカニズムを解説しているのが本書だ。とくに、脂肪の変動に伴う食欲の制御システムが解説の中心となっている。

じつは、動物には本来、「体脂肪を一定に保つ機構」があるという。著者はこう述べる。「体脂肪が減ると食欲が増し、代謝が下がる。逆に体脂肪が増えれば食欲が抑えられ、代謝が上がる。こうして体脂肪は一定の値に保たれている」。「このとき、体脂肪を測り、その情報を脳に伝えているのがレプチンである」と。この「メッセンジャー」であるレプチンが、本書の〝主役〟だ。

レプチンは、さまざまなところでつくられているが、おもな産生臓器は脂肪組織だそうだ。「白色脂肪組織の脂肪細胞でおもに産生されるレプチンの血液中の濃度は、体脂肪量に比例している」という。

では、「体脂肪の情報」は、脳のどこへ伝えられるのか。「メッセンジャー」であるレプチンは、脳のどの部位に作用しているのか。

「レプチンの作用を受けとめる分子」である「レプチン受容体」がつきとめられ、そして、レプチン受容体が、どこに発現しているかが明らかにされた。レプチン受容体は、視床下部のさまざまな部分に発現していた。(「視床下部」以外でもレプチン受容体の発現が見られたそうだ)

「「デュアル・センター・セオリー(二重中枢説)」は、一部は正しかったが、すべてをとらえたものではなかったということだ」と著者は述べている。「デュアル・センター・セオリー(二重中枢説)」とは、視床下部の外側野(「摂食中枢」)と視床下部の腹内側核(「満腹中枢」)の2つの中枢によって食欲がコントロールされるとする説のこと。

現在では、「レプチンのもっとも重要な作用部位は弓状核」と考えられているらしい。「食欲のコントロールに関わる視床下部の部位としては、この弓状核と、室傍核、外側野(摂食中枢)がとくに重要であると考えられるようになっている」という。

本書では、弓状核、室傍核、外側野のはたらきを詳しく見ていく。この解説が、本書の中核だ。ここでは、さまざまな物質名が登場する。

この解説の後に、「視床下部からの情報を受けて、食欲や食行動が脳全体でどのようなメカニズムで起こっているのか」を見ていく。著者は、「食欲は脳全体の機能である」と述べている。

ほかに、「肥満」「摂食障害」「食欲の人為的な制御」などの話題がある。また、「お腹がすいているとなぜ眠れない?」「病気になるとなぜ食欲がなくなる?」など、食にまつわる疑問に答えている。

ひとこと

食欲の脳内メカニズムがかなり複雑であることがわかる。脳部位や物質の名称を交えた解説を好む方向きの本。

初投稿日:2017年03月28日

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