センス・オブ・ワンダーを探して ——生命のささやきに耳を澄ます

書籍情報

【単行本】
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著 者:
福岡伸一/阿川佐和子
出版社:
大和書房
出版年:
2011年11月
定 価:
本体1,400円+税

福岡伸一と阿川佐和子の対談。「センス・オブ・ワンダー」と「動的平衡」という観点から、私たちのあり方を見つめなおす

ふたりの対談は、『せいめいのれきし』(バージニア・リー・バートン作)という絵本の話からはじまる。福岡伸一にとってこの絵本は「子どもの頃に読んだ宝物のような本で、第一の本」だという。この絵本の翻訳者でもある児童文学者の石井桃子がつくった「かつら文庫」という私設図書館に、阿川は子どもの頃に通っていたという。そこで阿川が読んだ絵本のなかには、『ちいさいおうち』(バージニア・リー・バートン作/石井桃子訳)があった。

そのような話から、石井桃子のつぎの言葉を紹介する。

「子どもたちよ。子ども時代をしっかりとたのしんでください。おとなになってから、老人になってから、あなたを支えてくれるのは子ども時代の『あなた』です」

この言葉を聞いたとき、福岡が「最初に思い出したのはレイチェル・カーソンの言葉」だという。その言葉を紹介している。その後半部分はつぎのようなもの。

「もしもわたしが、すべての子どもの成長を見守る善良な妖精に話しかける力をもっているとしたら、世界中の子どもに、生涯消えることのない『センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目を見はる感性』を授けてほしいとたのむでしょう。この感性は、やがて大人になるとやってくる倦怠と幻滅、わたしたちが自然という力の源泉から遠ざかること、つまらない人工的なものに夢中になることなどに対する、かわらぬ解毒剤になるのです。」

福岡にとっての「センス・オブ・ワンダー」は、ルリボシカミキリの青であり、また、新種の虫かどうかを見てもらうために上野の国立科学博物館に行ったときの出来事だった。阿川も、子どもの頃の話を披露する。「あの和ダンスのうしろに絶対別の世界があるはずだ」と思って入ろうとしたという。

そこから話は広がり、福岡は、「ある種の悔恨」を告白する。「凄惨なる死の生物探究をする生物学者になってしまったんだなという、ある種の悔恨があるんですよ」と。

「死ではなく生を見つめる生物学者に戻りたい」。最終章で福岡は、「人生のしまい方」のことを語る。福岡はこう述べる。「分子生物学者になって幾つかの遺伝子を発見したけれど、生命の探究をしていたはずがいつの間にか死の生物学をやっていた」。そして、こんな発言も。「私は生命に何を見つけようとしてきたのかを語っていくことに限られた時間とエネルギーをかけるべきなんじゃないかなと思うんです」と。

このことについて、阿川は質問を重ねて、福岡の言葉を引き出していく。

この最終章にいたるまでに、さまざまな話題が登場する。遺伝子、腸内細菌、GP2遺伝子、シェーンハイマーと動的平衡、脳死と「脳始」、花粉症、がん細胞、狂牛病、レーウェンフックとフェルメール、須賀敦子と絵画『二人の貴婦人』、「ドリトル先生」シリーズ、「子どもを子ども扱いしないフェアな大人との出会い」、村上春樹の小説のこと、阿川佐和子の作品のこと、文体のこと、など。

こうした話題のいくつかを通して、福岡は、「機械論的な生命観」への疑問を発し、生命は「動的平衡」なのだと語る。

進化論の話題や、人間の未来はどうなるかという話もある。「文明のあり方を考え直す時期に来ている」というようなことも語り合っている。

ひとこと

この本のなかの福岡伸一は、楽しそうで、安心感に包まれながら話しているように見えた。

初投稿日:2016年04月29日

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